円谷プロから着ぐるみを借りて……大学時代の河崎実監督がつくった完コピ8ミリ映画『√ウルトラセブン』
怪獣の着ぐるみづくりは『√ウルトラセブン』から
―― ある種マニアというか、ファン活動の一環で撮っていたみたいな感じは当時からあったんですか? 河崎 そうだね。プロになろうとは全然思ってないもんね。まず怪獣の着ぐるみを作るところから始めるんですよ。その頃、原口君も初めて怪獣を作ったんだけど。 ―― それはどの作品で? 河崎 『√ウルトラセブン』。 ―― 敵役の怪獣ですか? 河崎 フィング星人という名前にしたんだけど。それは、初代ウルトラマンの成田亨(注7)が最初にデザインした、ウルトラマン以前のデザイン。見たことあるでしょう? あれをまんま作ってるのよ。 ―― その頃、成田さんとは接触していたんですか? 河崎 してないね。その頃はそういう神様たちにまだ会えてなかったんですよね。学生だから。プロになろうとも思ってないしね。だから、ずっと後ですよ。成田さんとか高山良策さんとか。実相寺昭雄監督とか飯島敏宏監督と会ったのもだいぶ後。 注釈 1)原口智生 特殊メイクアーティスト、怪獣造型師、映画監督。 2)『ウルトラセブン』の8ミリ映画 『√ウルトラセブン』監督:河崎実 1979年公開。 3)怪獣倶楽部 竹内博が設立した特撮研究グループ。中島紳介、氷川竜介、開田裕治などが所属。 4)『TURN POINT10:40』1979年 監督:小中和哉 『Single8』(22)で主人公が作る8ミリ映画の原型 5)開田裕治 怪獣絵師の異名を持つイラストレーター。 6)一瀬隆重 当時関西で自主映画サークルいちせ会を主催。8ミリで『ウルトラQ 闇が来る!』『理想郷伝説』を制作。その後プロデューサーとして『帝都物語』『リング』『呪怨』などを制作。 7)成田亨 美術デザイナー、彫刻家。『ウルトラマン』『ウルトラセブン』の美術デザイナーを務めた。 <聞き手>こなか かずや 1963年三重県生まれ。映画監督。小学生の頃から8ミリカメラを廻し始め、数多くの自主映画を撮る。成蹊高校映画研究部、立教大学SPPなどでの自主映画製作を経て、86年『星空のむこうの国』で商業映画デビュー。97年、『ウルトラマンゼアス2 超人大戦・光と影』でウルトラシリーズ初監督。以降、監督・特技監督として映画・テレビシリーズ両方でウルトラシリーズに深く関わる。特撮、アニメーション、ドキュメンタリー、TVドラマ、劇映画で幅広く活動中。 主な監督作品に、『四月怪談』(88)、『なぞの転校生』(98)、『ULTRAMAN』(04)、『東京少女』(08)、『VAMP』(19)、『Single8』 (23)、『劇場版シルバニアファミリー フレアからのおくりもの』(23)など。 『ウルトラセブン』でキリヤマ隊長を演じた中山昭二が河崎実監督の『キリヤマ』に出演…その後電話の向こうで無言になったワケ へ続く
小中 和哉/週刊文春CINEMA オンライン オリジナル