<STAP細胞問題>「検証実験」では論文の「不正」はわからない
異なる「再現性の有無」と「不正の有無」
追試で確認できるのは「再現性の有無」だけです。論文における「不正(捏造・改竄・盗用)の有無」は、追試(や理研のいう「検証実験」)では確認できません。「再現性の有無」と「不正の有無」は、根本的に異なることです。再現性が認められても、つまりSTAP細胞が存在しても、不正がなかったことにはならないし、不正が許されるわけではありません。 理化学研究所の調査委員会は、それまでに指摘された多数の疑惑のうち6点だけを調査し、3月31日、そのうち2点だけを不正と認定しました。しかし、その調査は明らかに不十分で、専門家の多くもマスコミも納得しませんでした。 「不正の有無」をはっきりさせるためには、これまで指摘されてきた多数の疑惑について、当事者への聞き取りを実施したり、残されたノートやサンプルを綿密に分析したりするしかありません。 6月12日に外部有識者による改革委員会が、不正の再発防止についての提言書をまとめたとき、野依良治・理化学研究所理事長は、「検証実験」だけでなく論文における不正の調査にも取り組むことを約束しました。 この日まとめられた理研の改革のための今回の「アクションプラン」にもその必要性が盛り込まれ、現在、「予備調査」が行われているといいます。しかしながら、『ネイチャー』論文においてどのような不正があったのか、理研としての認識をはっきりさせないまま、しかも多くの第三者専門家による追試が成功していないにもかかわらず、現在に至るまで「検証実験」が優先されてしまっていることは、理研の信頼性を貶め続けています。 (粥川準二/サイエンスライター)