会社と社員が互いに「選び合う」、ソニーに今も息づく創業者・盛田昭夫の「独自の人材観」
■ 創業精神を盲従せずに「本質を継承」すべき ――日本企業はソニーの働き方や人事制度から何を学ぶべきでしょうか。 片山 ソニーの人材に対する考え方、そして人的投資の在り方を学ぶべきではないでしょうか。 日本が「失われた30年」に陥った原因の一つに、「人材への投資」を怠ったことが指摘されています。近年、人的資本経営の重要性が叫ばれているように、企業価値の源泉は知識やアイデアといった無形資産へとシフトしています。このような状況において、人材への投資は不可欠です。 その点、ソニーは業績が悪化して苦しい時期でも、人事のあり方を抜本的に見直し、人的投資を怠ることはありませんでした。こうした人に対する考え方こそが、ソニーがどん底から復活し、再び成長ステージに立つことができた要因だと考えています。 ソニーは創業以来大切にしてきた「個を大切にする」という人材に対する考え方を「Special You, Diverse Sony(スペシャル・ユー、ダイバース・ソニー)」と再定義しています。「主役はあなた、多様性こそがソニーの競争力」という意味です。 ソニーは、創業者である井深大氏と盛田氏の創業精神を、盲従するのではなく「戦略的に本質を継承すべき」対象と捉えています。こうしたソニーのユニークな考え方に注目してもらいたいと思います。
三上 佳大