4年間いじめられていることを隠していた娘。親として何ができるのか… 悩み苦しみ、辿り着いた答えとは?【書評】
我が子を守りたいと思うあまり、「傍観者」という加害者になってしまう心情は親であれば理解できるものであるからこそ、もし自分が同じ立場に置かれたら…と想像してしまう。 また、いじめに気づけなかった自分を責めつつ、見て見ぬふりし続けた周囲の大人に怒りを向けたくなるナツミのもどかしさもリアリティがある。
そうした整理できない感情への決着のつけ方も本作では学べるので、親側の心を守るためにも、ぜひ手元に置いてほしい。 いじめ問題は一筋縄で行かないことが多く、根本的に解決することが難しい。なぜなら、子どもの本心が見えにくく、解決のために介入した大人たちには、いじめの本質が見えていないことも多いからだ。本作でも物語の後半でハルコの口から大人が把握していなかった真相が語られ、衝撃を受ける。 我が子がいじめを受けていると知り、早く解決したい気持ちが先走ることもあるかもしれない。しかし、介入する大人は一方向からいじめ問題を見て理解した気になったり、「悪者」を作り出したりしないように注意することも大切だと気づかされた。そうした親の姿も子どもは見ているのだと、胸に留めておきたい。 加害者への怒りや傷つけられた側が苦しまなければならないという歯がゆさ、「なぜ、うちの子が…」というあてのない問いなど、こみ上げる感情が全てスッキリするいじめの解決法は、きっとこの社会には存在しない。 だが、そうした理不尽な社会であるからこそ、親側は我が子をいじめから守るために何ができ、何をすべきか考え、慎重に行動していきたいものだ。 いじめが日常化している環境で過ごす子どもたちは、見方を変えれば、みな被害者――。そう訴えかけもする本作は報復ではない、本当の意味でのいじめの乗り越え方に気づくきっかけも授けてくれる。 文=古川諭香