AIエージェントの発展とRAGの新境地、「エージェンティックRAG」が注目される理由
エージェンティックRAGをめぐる最新動向
エージェンティックRAGに特化したスタートアップも登場しており、実用化/普及の速度は今後さらに加速する公算だ。VentureBeatの報道(2024年10月8日)によると、スタートアップのVectorizeが360万ドルのシード資金を調達し、エージェンティックRAGプラットフォームの一般提供を開始する。同社のプラットフォームは、リアルタイムのデータ処理に対応したエージェンティックRAGの実装を可能にするという。 Vectorizeが焦点を当てるのは、データエンジニアリングの自動化。同社のクリス・ラティマー氏(CEO兼共同創業者)はVentureBeatの取材で、生成AIプロジェクトの多くが、ベクトルデータベースに格納される情報のコンテキスト不足により、ハルシネーションや誤った解釈に悩まされていると指摘している。Vectorizeは、非構造化データの取り込みから最適化まで、エンタープライズRAGのデータパイプラインを自動構築する機能を提供することで、この課題の解決を目指す。 すでに同社のエージェンティックRAG機能は、AI推論チップ開発のGroqによって実践投入されている。Groqは、Vectorizeのデータパイプラインを活用したAIサポートエージェントを開発。このエージェントは、過去に類似の質問があった場合、その情報を参照しつつ、人間を介さずに問題を解決できるという。一方で、エージェントが解決できない問題が発生した場合は、人間のオペレーターに引き継ぐ仕組みも備えている。 VectorizeのRAGプラットフォームでは、企業のデータ鮮度に合わせて、ベクトルデータベースの更新頻度を柔軟に設定することも可能だ。週1回の更新、リアルタイムの更新など、ニーズに応じた設定ができるという。ラティマーCEOは「古いデータは古い意思決定につながる」と指摘し、データ更新のタイミングが重要であることを強調する。 Vectorizeのプラットフォームは、ベクトルデータベースやベクトル埋め込み技術そのものを提供するものではない。代わりに、Pinecone、DataStax、Couchbase、Elasticなどの既存のベクトルデータベースと接続し、非構造化データの取り込みと最適化を担う。また、OpenAIのadaやVoyage AIなど、さまざまなベクトル埋め込みモデルを使用できる柔軟性も備えている。 AIモデル自体の進化速度は若干鈍化しているといわれるが、AIエージェントシステムの発展余地はまだ大きい。AIエージェントの進化に伴い、エージェンティックRAGがどのように発展していくのか、今後の注目ポイントとなる。
文:細谷元(Livit)