マンネリ化し始めた「観光列車」 似たようなデザイン&サービスで本当にいいのか? 現代人を魅了するための「三つの逆転策」を考える
観光列車の飽和状態と課題
観光列車はその名のとおり、観光を目的とした特別な列車だ。通常の通勤や輸送用の列車とは異なり、風景や地域の魅力を楽しむことを目的としており、車両のデザインや内装、サービスに工夫がされている。その多くでは、地域の食材を使った料理や地域の文化を体験できるイベントも提供されている。特に、風光明媚(めいび)な地域を走ることが多く、車窓からの景色が魅力となっている。 【画像】どの部屋にするか迷うね! これが「サンライズの車内」です!画像を見る(計13枚) そんな観光列車だが、 ・地域活性化 ・鉄道事業者の収益改善 を目的に運行されるようになって久しい。JR各社だけでなく、 ・えちごトキめき鉄道(新潟県上越市)「雪月花(せつげっか)」 ・あいの風とやま鉄道(富山県富山市)「一万三千尺物語」 など、他の鉄道会社でも観光列車の運行が増えている。 しかし、完全に新しい車両を使った観光列車の導入事例は少なく、最近では 「似たようなデザインやサービス」 が多く、一度は話題になるものの、次第に飽きられてしまうことが多い。多くの観光列車は、古い車両や既存の車両をリニューアルしてコストを抑えた運営が主流となっており、その結果として個性が薄れ、特別感が失われていることも少なくない。 また、和モダンな内装や地域料理を提供するサービスは一定の評価を得ているが、これも多くの観光列車で似たような傾向が見られ、利用者に新鮮さを感じさせることが難しくなっているのが現実だ。鉄道事業者のコンテンツマーケティング力も十分とはいえず、利用者のニーズやトレンドを反映しきれていない。こうした背景を踏まえ、観光列車が飽きられないためにはどうすればよいのかを考えてみたい。
筆者の意見
鉄道事業者は、既存の車両の内装を地域の素材(例えば木材)でデザインし、外観を地域に合わせたカラーリングにする方法をよく採用している。 しかし、筆者(高山麻里、鉄道政策リサーチャー)がさまざまな利用者にヒアリングした結果、鉄道愛好者を含む多くの人が次のように感じていることがわかった。 ・多くの観光列車を乗り歩いている ・同じような外装デザインや内装デザインが多く、飽きている ・乗車賃が高いと感じている そのため、彼らが求めているのは、 ・地域らしさを感じられる ・地域の人々とコミュニケーションを取れる ことだ。観光列車が飽きられないためには、車両自体の魅力だけでなく、地域との動的な連携、利用者の多様なニーズへの対策が不可欠なのだ。具体的には、 ・地域の「旬」を取り入れる柔軟な仕組み ・ターゲット層ごとの体験を重視したサービス展開 ・利用者の声を反映させた改善とマーケティング活動 のような「逆転策」が重要である。