ジュビロ磐田・山田大記が今季限りでの引退を表明。福西崇史が選手としての魅力と人柄を語る「サポーターにとって特別な存在」
■辛い時期をまとめる山田の苦悩 ――ドイツから磐田に戻ってきてからの山田選手はどう感じました? 福西 やっぱり意識の高さは、帰ってきた当初はとくに違うなと思いましたね。その意識の違いを周りの選手たちがどう感じるか。そこに磐田は苦悩しているところはあると思います。 ――近年はJ2降格とJ1昇格を繰り返すシーズンが続いてキャプテンの山田選手の苦悩もあるんじゃないかと思います。 福西 クラブ全体が不安定なところもあって、それは当然チームにも影響があることなので、そこをまとめるのは本当に大変だったと思います。彼がこのタイミングで引退を発表したのは、ここでチームがまとまって奮起してほしいという思いがあってのことでもあると思うし、磐田はもっとピッチの中で気持ちを出せると思うんですよ。 FC東京戦で大記がPKを決めて、望みを繋いでくれたわけですから最後1試合、残留をかけてみんなが「大記ために」と奮起してくれることを願いますね。 ■伊東輝悦も50歳でついに引退 ――山田選手のほかにも今季は多くの選手が引退表明をしました。その中で伊東輝悦選手も50歳で引退を発表されました。 福西 ついに引退ですか。テルさんとは一緒にプレーもしたことありますけど、側で見ると鉄人と言われる所以がわかりますよね。年齢を重ねると気力が続かなかったり、メンタル的にキツいようなときでも彼は黙々とやれる人なので、そんなテルさんがついに辞めるんだって思いましたね。 ――伊東選手のストイックさはどんなところに感じました? 福西 テルさんのストイックさは、自分を厳しく律するというところはもちろんあったと思うんですけど、それよりも一番は「自分のしたいことをする」というストイックさだったと思います。周りの人に流されず、自分の意志を貫ける強さを持った人で、だから50歳まで現役を続けられたんだと思いますよ。 ――ベテランになってくると気力が続かなくなってくるというのはよく聞きますが、そこは本当に強いものを持っていたということですよね。 福西 これはもう真似できないものですよ。怪我をしても淡々と治して、コンディションを戻すこと。この戻すということが本当にしんどい。でも50歳まで毎年ちゃんと自分の体を追い込んでコンディションを作り続ける強さ、ストイックさは驚異的だったと思います。 ――磐田のライバル、清水エスパルスの中心選手の一人だったわけですが、嫌な選手でした? 福西 めちゃくちゃ嫌でしたよ。相手の嫌なことができるし、それを声を出して主張するというより、こっそりできるタイプで、本当にいやらしい選手でしたね。味方にしたら安心できるというか、頼りになる選手ですよ。 ――福西さんは同じボランチでしたけど、伊東選手から学ぶことは多かったですか? 福西 多かったですね。磐田は上手い選手ばかりでしたけど、その中で周りに合わせながらも自分を出すやり方というのは、テルさんから多くのことを学びましたね。 辞めてしまう寂しさはありますが、今はとにかく「お疲れ様でした」という一言ですね。引退後になにをされるかわからないですが、サッカーに携わってテルさんの貴重な経験を次の世代に繋いでほしいと思います。 構成/篠 幸彦 撮影/鈴木大喜