元・銀ホスのアパレルプレスが語る仕事論 「今も“結果が全て”の世界だと思ってる」
それから、細やかな配慮も私には欠けていました。銀座のクラブは接待での来店も多くて、そういう方々は大事な「仕事の場」として利用されています。だから私たちも楽しんでいただくだけでなく、場をうまく回す潤滑油にもならなきゃいけない。私のように、飲みすぎてお客さまのテーブルで粗相して、スタッフからブチギレられるなんてもってのほかでした。
WWD:今の室さんからは、ちょっと想像がつきませんね。
室:あはは(笑)。努力や気遣いのできるホステスさんたちが認められ、他の方へ紹介され、数珠繋ぎのようにお客さまが増えていく。そうやってのし上がっていく世界です。私にはプライベートで遊んでいただけるお客さまが一定数ついても、接待では使われなかったのは、多分そういうことだったんだと思います。それでだんだん自信を失って、気分も落ちていって、ある日同伴の食事でご飯の味がしなくなってしまいました。きっと、限界だったんですね。その時はちょうどコロナが流行り始めて営業が制限され、銀座の夜の街にも光が灯らなくなっていた時期。先が見えない中で、夜の仕事から足を洗う決意をしました。
WWD:なぜアパレルに?
室:専門学校時代に有楽町マルイでアパレルのアルバイトをしていて、本当に楽しかったんです。服を売りたいという思いがまた芽生えていました。アルバイト時代の有楽町マルイの同じ階に「スウィングル」があったのを思い出して。次に働くならお姉さん向けブランドだと思っていましたし、ちょうど小田急新宿店の新店スタッフの採用をしていたので、思い切って応募しました。
ただやっぱり面接の時に突っ込まれたのが、夜の仕事をやっていた「空白期間」。これはもう隠しても仕方ないと思って、水商売をしていたことを正直に明かしました。ダメかと思いましたが、受かってびっくり。後から聞いた話では、上層部が「私を採用するか」という話になった時、「嘘をつかない素直さがいい」ということになったようです(笑)。