今後に“注目”したい選手も! 大谷翔平以降「二刀流」に挑戦したNPB選手はどうなった
矢沢と同じくもう一人プロ入り時点から二刀流に挑戦しているのが武田陸玖(DeNA)だ。山形中央時代は甲子園出場こそなかったものの、U-18侍ジャパンにも選出。昨年行われたU-18W杯でもチームの優勝に貢献した。ルーキーイヤーの今シーズンはキャンプから怪我で出遅れてリハビリが続き、投手としては実戦登板なし、野手としても二軍で4試合に出場して1安打と少し寂しい成績に終わった。 ただそれでも球団内からの投手、野手両面での評価は高く、フェニックス・リーグでは二刀流として試合にも出場。今月下旬から台湾で行われるアジア・ウインター・リーグにも派遣されることが決まった。矢沢よりも野手としては長打が期待できるタイプであり、将来の中軸候補としても期待は高い。来年はキャンプから体調を万全に整えてまずは二軍で結果を残したいところだ。 ここまで挙げた2人は入団時から二刀流としてプロ入りしているが、それ以外の選手は厳しいのが現状だ。戸根千明(前・広島)は巨人時代の2020年に野手としても二軍戦に出場したものの結果を残せずに翌年からは再び投手に専念。2022年オフの現役ドラフトで広島に移籍し、2023年にはリリーフで24試合に登板したが、今年は一軍昇格を果たせずに自由契約となった。上原健太(日本ハム)も2021年オフに二刀流挑戦を表明。しかしそれ以降の3年間で打席に立ったのはセ・パ交流戦で投手として登板した時だけであり、野手としての出場はない。昨年オフには改めて二刀流挑戦の継続を表明しているが、来シーズンはどうなるか不透明な状況だ。 こうして見ると改めて二刀流の難しさを痛感するが、今年のドラフトで日本ハムが1位指名した柴田獅子(福岡大大濠)は投手としても野手としても高い能力を誇り、チームの栗山英樹CBOもそのポテンシャルの高さを評価するコメントを出している。また多くはないものの、大学野球の現場では投手が指名打者を兼任できるいわゆる“大谷ルール”を適用するケースがあることも確かだ。大谷のようにメジャーで二桁勝利とホームラン王獲得を同時に達成するような選手はなかなか出てこないかもしれないが、また新たな形の二刀流選手が球界を席巻してくれることを期待したい。(文・西尾典文) 西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。
西尾典文