白井元調教師と学ぶ血統学【158】サンデーサイレンスが日本の競馬界に与えたもの
【白井元調教師と学ぶ血統学「温故知新」】 元JRA調教師の白井寿昭氏に指南役をお願いし、様々な角度から血統を考える連載の第158回。長きにわたるサンデーサイレンス編もいよいよ完結へ。多くの名馬を輩出したサンデーサイレンスの偉大さについて、白井氏が独自の結論を述べる重要な回となるだけに特別無料公開とさせていただく。 進行は東スポ競馬・関西地区本紙担当であり、白井氏との親交も深い松浪大樹記者。今回も興味の尽きない血統論を堪能していただきたい。
サンデーサイレンス編の最終章
松浪大樹(東京スポーツ記者=以下、松浪)サンデーサイレンス編もエンディングを迎えることになりました。長かった連載のまとめとして、先生のサンデーサイレンス像を改めて教えてください。 白井寿昭氏(元JRA調教師=以下、白井)サンデーが登場するまで、日本の馬は発祥の地である英国。そこから輸入してくる馬が実に多かった。英国こそが先進国で、その血を入れることが競馬の発展につながると思ってたからな。 松浪 でも、それではスピードが足りない。そういう認識を持つに至ったんでしたね。 白井 狩りのために走り続けること。これが馬に人間が求めるものであったんやけど、そうではなくなった。競馬が徐々に変わっていって、求めるものが持続ではなくなったわけ。単純なスピードを持ってなあかん。こういう流れになって。 松浪 時代の変化ですよね。日本競馬のスピード化が急激に進んだのがサンデーサイレンスの登場した1990年代。 白井 ちょうど2歳を見に米国に行って。で、そのときにサンデーを見た。あのしなやかな走りを見てさ。すごいなあ。そのサンデーが日本に来るの? これもまたすごいなあ。すごいドキドキしたんやわ。 松浪 ダンスパートナーにつながるエピソードでした。 白井 母のダンシングキイもセールで見とるからな。父はニジンスキーで。これまたすごいなあと。生まれは6月の遅生まれやったし、誰も手をつけへん。で、(吉田)照哉さんにお願いをしてやらせてもらって。細い馬やったけど、サンデーの時代が来ることを僕は確信してたから。これまでのトサミドリとか、コダマとかシンザンとか。そういったところから切り離して、サンデーのしなやかさに飛びついた。これから変わってくる。それが結果的に世界にさ。ディープインパクトだとか、活躍する馬がたくさん出てきて。サンデーだらけになって。感慨深いものがあるわ。