腕時計投資の伏兵・カルティエの“不人気モデル”が高騰したワケ。11万円の時計が「7年で50万円超」
パテックフィリップノーチラスのような“強い個性”
サントスガルベは、2016年頃といった時期において、全く値上がりといった印象はなかったのですが、それでも「買う」という人は少なかったといえます。というのも、当時の印象も、1990年代後半同様に「バブル期に流行った時計」という感じだったからでしょう。 実際、私もその頃までサントスガルベに興味を持てず、良い印象はありませんでした。しかし、そういった印象を抱いていた私は、ふとした時に、サントスガルベには「パテックフィリップノーチラス」のような“強い個性”があると感じたのです。 この“強い個性”こそ、ある時期には「ダサい」「古臭い」といわれてしまうものの、そののちその“強い個性”がたまらない存在になっていくという変化をするのです。まさに、珍味のような存在で、子どもが食べると「まずい」となる一方、大人が食べると「たまらない」となるような味だといえます。 私は、この感覚こそが「ノーチラス」と似ていると思い、2016年12月に腕時計投資新聞で「ノーチラスのような可能性を秘めているかも」という記事を執筆。それから私は、サントスガルベに興味を持ったため、知り合いにもサントスガルベを勧めるようになっていきました。 ただ、その後もしばらくサントスガルベの相場は変化せず。私が「ノーチラスのような可能性を秘めている」と言い出してから4年後の2020年12月になっても同様です。ちなみに、サントスガルベのXLサイズだけは、早い時期から相場が変化しており、2017年まで30万円程度だったのが、2018年なると40万円以上になっていました。 その一方で、まさにバブル期に流行っていたLMサイズは、相場変化せず。2020年頃になっても、相変わらず自動巻モデルでも25万円前後といった価格で購入可能だったのです。
サントスガルベの相場、2022年に大きく変化
そんなサントスガルベですが、2022年になると大きな変化を遂げます。 まず、2018年頃から先陣を切って値動きしていたXLサイズが上昇し、70万円以上という状態になったのです。また、それまでほぼ値動きしなかったといえるLMサイズでも目立った上昇に転じ、それまで25万円前後だったステンレスは40万円以上、27万円前後だったコンビモデルは50万円以上という水準に達しました。 そして、その後もサントスガルベの上昇は継続。現在では、LMサイズのクォーツモデルにおいても目立った上昇傾向が見られており、その現在水準は50万円程度に達しているのです。2016年頃に約11万円で購入可能だったわけですから、約5倍になったといえる状態であります。 さらに、LM自動巻モデルについては、ステンレスが70万円程度、コンビが80万円程度といった状態になっているわけで、メンズサイズのサントスガルベは、数年前では考えられないぐらいの相場に達しているのです。 実は私、大学の友人と、行きつけの焼肉屋さんのマスターにも、このサントスガルベを勧めたのですが、彼らは「買う」という決断を実施。大学の友人はコンビモデルを約26万円で購入。現在相場は約80万円といった状態になっています。また、焼肉屋さんのマスターは、ステンレスモデルを約24万円で購入したのですが、その現在相場は約70万円であります。 というわけで、今回は、サントスガルベというモデルが値上がりしているということをお伝えしたわけですが、情報をきちんと掴むことが、時計選びで重要だといえるでしょう。 今は全体的に値下がりと漠然としたイメージにとらわれず、情報を精査して、中古腕時計を楽しんでいただきたいと思います。 ―[腕時計投資家・斉藤由貴生]― 【斉藤由貴生】 1986年生まれ。日本初の腕時計投資家として、「腕時計投資新聞」で執筆。母方の祖父はチャコット創業者、父は医者という裕福な家庭に生まれるが幼少期に両親が離婚。中学1年生の頃より、企業のホームページ作成業務を個人で請負い収入を得る。それを元手に高級腕時計を購入。その頃、買った値段より高く売る腕時計投資を考案し、時計の売買で資金を増やしていく。高校卒業後は就職、5年間の社会人経験を経てから筑波大学情報学群情報メディア創成学類に入学。お金を使わず贅沢する「ドケチ快適」のプロ。腕時計は買った値段より高く売却、ロールスロイスは実質10万円で購入。著書に『腕時計投資のすすめ』(イカロス出版)と『もう新品は買うな!』がある
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