オワハラ批判されるけれど…全員内定キャンセルも学生、人事、双方大変 どこかおかしい就活
■就活、採用、にまつわるさまざまな問題点
新卒一括採用、終身雇用、年功序列、といった「日本型雇用慣行」は急速に変化している。転職が異例でなくなり、経験者採用(中途採用)が増加。ジョブ型の導入などで、年功序列も崩れてきている。 こうした変化は、ミスマッチの解消や年齢にとらわれない能力の発揮など、企業の生産性を向上させ、産業界にもプラスの効果をもたらしてきているだろう。 しかし、いまだ見直されないのが新卒採用スケジュールだ。 問題点を確認したい。 まず政府は、「学業の妨げにならないように」との理由で、下記のような日程ルールを敷いている。 ・会社説明会解禁日 大学3年の3月1日・面接解禁日大学4年の6月1日・内定解禁日大学4年の10月1日 しかし、これを見るだけでも、まだ大学4年次まるまる1年残っている時期より前から企業の説明会が始まり、スケジュール上は内定解禁日まで7か月間もある。さらに、実際には、このルールを守っていたら人材獲得競争に乗り遅れるため、多くの企業がもっと前から始めている。 こうした長期間の採用活動が、「オワハラ」を生んでいる一つの原因だ。 政府は、“日本の持続的な発展のためには、若者の人材育成が不可欠”で、“学生が学業等に専念し、安心して就職活動に取り組める環境をつくることが重要”、“(企業は)足並みを揃えた取り組みを”と呼びかけながら、このような日程ルールにしているのはおかしいのではないか?
■今の就活日程によって懸念されること
日本の学生は、大学で勉強しなくて良いのか? 労働人口が足りない日本。今後、海外の人材に一層頼っていくことになる=外国人と競争することになる。大学でしっかり勉強して来た外国人と、互角に戦えるのだろうか? かつての「大学新卒入社」は、企業が一から新入社員を育成するのが当たり前だった。日本では、大学で学んだことと就職後の業務内容は一致しないことも多く、入社後に社内の人たちとうまくやれることは大事だが、大学で何を学んだかは、仕事上大事ではないことが多かった。 しかし、日本型雇用慣行も変化しつつあり、経験者採用も増え、もっといえば、AI(人工知能)に多くの業務が取って代わられる中で、就職する前に自身の能力を高めておく必要があるのではないだろうか? そう考えれば、現行の、3月1日から翌年卒業する学生向けの採用活動がスタートすることを政府が決めていること自体、おかしくはないだろうか?「学生の勉学より自社の採用」を産業界が優先して、採用活動の早期化を放置している状況も「日本の人材育成」にとって負の影響を与えるのではないか?それとも、大学が、産業界に評価されるような学びを学生に与えられていないということだろうか。 経団連は4月、「人材力を含む国力向上」の観点から、就職・採用活動のあり方について、これまで産学で対話を行ってきたとして、検討状況を発表した。 大学側からは、「就職活動の早期化が進むことにより、学生はキャリアについて考える時間を十分に確保できないまま就職活動を始めることになるうえ、企業も採用活動において学生が懸命に学んだことをきちんと評価しないことになることから、ミスマッチが生じている」との意見が出されたという。これに対し、企業側からは「一部の学生は早期化を受容しつつある現状を踏まえると、この流れを大きく変えることは難しいのではないか」との認識が大勢を占めたとしている。経団連は、「まだ結論には至らず、今年度末に方向性を示したい」としている。 企業にとって重要なのは人材。国にとって重要なのは人材。 経団連には、「大企業と優秀な学生にとっては良いが、その他多くの企業や学生は取り残されてしまう、あるいは、この「オワハラ」を生むような、不合理な採用活動はそのままになってしまう」とならないよう、国力をあげる採用活動を提案してほしい。 そして政府は、日本で学生の努力が報われる適切な就職、採用の環境整備をする必要がある。