オワハラ批判されるけれど…全員内定キャンセルも学生、人事、双方大変 どこかおかしい就活
4月16日、政府は多くの企業が加盟する「経団連」と「日本商工会議所」に通達を出した。「学生の職業選択の自由を確保するため、新卒等の採用を行う企業などはオワハラを行わないこと」。「オワハラ」とは「就活終われハラスメント」の略で“学生に対して、自社の内定や内々定と引き換えに、他社への就職活動を取りやめるよう強要すること”などと説明している。しかし、そもそもなぜ「オワハラ」という言葉ができるほど、企業はそのような状況に追い込まれるのか? その背景には日本特有の就活・採用慣行があり、学生、企業、双方を不幸にしている。さらにそれにとどまらない、日本の人材育成にとって深刻な問題に、政府は手を入れるべきではないのか?(日本テレビ・解説委員・経済部・安藤佐和子) 【図解】副業・兼業で「週1副社長」を――“人口最少”鳥取県のプロジェクトが人気 年3000人が応募 リモートで「人材不足」解決
■「去年は全員に逃げられた」~採用ゼロの現実
「去年は3人採用して3人ともキャンセルになりました」。残念そうにこう話したのは、関東の警備会社で人事を担当する男性だ。採用は基本的に新卒を対象としていると言う。「ことしも5人は欲しいが、3人採れれば御の字かなと」。 この男性が足を運んでいたのは、中小企業330社と大学100校の就職支援担当者らのための情報交換会だ。(4月25日に東京・港区で東京商工会議所が主催)。 参加した企業の採用担当者らに話を聞くと、「学生優位の売り手市場」の厳しい採用活動の実感が伝わってきた。 (千葉・商社)「学生向けリモート説明会に8人申し込んできても、連絡もなく半分は不参加ということもある。学生の超売り手市場で、大手企業がこれまで手を出さなかった範囲の学生まで手を出してきていると感じている」。 (埼玉・機械メーカー)「全体的に内々定を出す時期が早まっていると感じる。うちも去年は内々定を出したのは6月だったが、今年は4月の最終週にもう最終選考を行う」。 今後も人口減少が続き、特にデジタルに強い若い人材が必要となる見通しの中で、企業の人材確保への焦りは募っている。良い学生を他社に採られる前に確保したいと思うのは、企業の人事担当者として当然のことだ。 だが、内々定を出しても、その後、学生がより条件の良い企業から内々定をもらい、自社をキャンセルしてくれば、また採用活動のやり直しとなる。 「うちに本当に来てくれるよね?」と確認したくもなるだろう。