プロ投資家の目で見ると...物流の2024年問題の裏で成長する「ある産業」とは!?
人手不足が深刻化し、これまでのようには地方にモノが届かなくなる未来は近い。一方で、この状況を契機に「成長する産業」もある──
日夜、モノを移動することで社会を支える物流・運送業。「いつでも、どこでも、すぐに届く」ことが当たり前になった裏では、長時間労働の常態化が問題視されていた。 【動画で詳しく見る】藤野英人氏が語る「物流の2024年問題と成長産業」 そこで、働き方改革関連法に基づき、今年4月からドライバーの時間外労働に上限規制が適用された。これにより今、日本は物流の停滞が懸念される「2024年問題」に直面している。 社会のあり方を大きく変えるこの問題に切り込むのが、日本の資産運用会社レオス・キャピタルワークスの最高投資責任者、藤野英人氏。 同社のYouTubeチャンネル「お金のまなびば!」の動画「プロ投資家の視点!物流問題の影響はどこまで及ぶ?住む場所問題、輸送コスト増...一方で成長産業も!」では、藤野氏が物流の「2024年問題」が及ぼす影響について解説している。 藤野氏は、「物流に関わる人たちの待遇を良くし、人権を守るための改革だが、本当に働く人にとって良かったのかは微妙なところ。極端な人材不足が起きており、これまでのサービス体制はおそらく維持できなくなるだろう」と指摘。 10年も経たないうちに地方の人手不足が深刻化し、これまで通りにはモノが届かなくなる、あるいはコストが高くなる可能性が高いと推察している。 「これは国のせいではなく物理の法則。人が減る中で商売を成り立たせるためにはやらざるを得ない。地方は土地が安く、空気も水も綺麗で、人情がある。住みたい場所に住む権利は確保されるべきだが、相応のコストは負う必要があるだろう。『どこに住むか』が人生の大きな選択肢になる時代がやってきた」 深刻な人手不足は各方面で影響を及ぼしている。「地方に住みたい、かつ安く運んでほしい」という個人の希望を叶えることは難しい社会になりつつあるようだ。
モノが届きにくくなることで「冷凍食品」「冷凍庫」の需要が高まる
一方で、物流問題を契機に成長する産業もある。それは「冷凍食品」だと藤野氏は言う。長期保存可能な食品をまとめ買いするニーズが高まると予想されるからだ。 それに付随し、冷凍庫の需要も増えているという。藤野氏は都心から電車で約1時間の距離にある神奈川県逗子市で暮らしており、近所のスーパーやコンビニエンスストアで冷凍食品の売り場拡大をよく目にするようだ。 統計上でも、家庭用冷凍庫、業務用冷凍機器の市場はコロナ禍を契機に拡大している。 「人々のニーズにより、どういう社会変化が起きるのかを想像すると、それに対するサービスを考えたり、消費者として色々なことができたりするんじゃないかと思う」と藤野氏。さらに、人手不足の根底にある少子高齢化について言及する。 「国は少子高齢化対策を行ってきたが、国に言われたからといって子どもをつくる選択肢を取る人は少ないだろう。その結果、少子高齢化社会になったのだとしたら、国民全体で責任を負わなければならない。そのスタートが物流『2024年問題』だ」 今後、地方ではモノの輸送にかかるコスト増大は避けられない。一方、これにより都心一極集中がさらに進めばインフレが加速するので、物価や賃料の値上げも止められないだろう。都心と地方、どちらに住んでもデメリットは存在する。 物流「2024年問題」は業界関係者だけの問題ではない。人口が減った社会において、全ての人に生き方の選択肢が問われている。 構成:酒井理恵 YouTubeチャンネル「お金のまなびば!」