『侍タイムスリッパ―』で殺陣師の役を好演した「斬られ役歴60年」の峰蘭太郎さんの心にひっかかった「大御所俳優の言葉」
話題のインディーズ映画『侍タイムスリッパー』の勢いが止まらない。『侍タイムスリッパー』では殺陣師の役を好演し、自身は斬られ役歴60年の峰蘭太郎さんに、その映画人生について語っていただいた。 【写真】笑うたびに目尻が優しく下がる殺陣師役・峰蘭太郎さん 『侍タイムスリッパー』ヒロイン・沙倉ゆうのさんとの対談はこちら:<映画の撮影なのに「人数少なくない?」…『侍タイムスリッパー』ヒロイン役・沙倉ゆうのさん、殺陣師役・峰蘭太郎さんが語る舞台裏>
叱られるために東映へ
峰:脚本を読ませてもらって、面白いだけじゃなくてジーンとした。タイムスリップものですけど、武士と武士の気持ちの渡り合いがしっかり描かれていて、それがあのラストの決闘まで繋がっている。自分の中でつよく「時代劇」らしさを感じた。 ――『侍タイムスリッパー』のなかで、「時代劇をもう一度盛り上げよう」と斬られ役出身の人気俳優・風見恭一郎役の冨家ノリマサさんがスピーチをするシーンがあります。峰さんは時代劇全盛期にもご活躍されていましたが、何か思うことはあるでしょうか? 峰:当時は朝の8時にロケに出発して立ち回りをして、帰ってきて夕方、急いで食事を済ませてまたロケに出て夜のシーンで立ち回りをして。そういう我々が必死だったテレビ劇全盛期の作品を、安田監督は子ども時代に見ていたんでしょうね。 1948年生まれ。母親に連れられて映画をよく観に行った。当時、時代劇は今でいう『仮面ライダー』のように子どもたちの憧れであり娯楽だった。峰もチャンバラ遊びが好きな子どもで、自然と殺陣に興味を持つように。母親が衣装部で働いていたため、峰にとって映画は身近だった。16歳で大川橋蔵に師事。斬られ役の世界に入る。23歳の頃、行き詰まりを感じるも、すでに中堅以上の立場である峰は誰からも叱られることがない。「これではダメだ」と一念発起し東映へ入った。 峰:昔東映では片岡千恵蔵さん市川右太衛門さんを「両御大(りょうおんたい)」と言ってね。片岡千恵蔵さんは垂水山の近くに住んではるから「山の御大」。市川右太衛門さんは北大路に住んではるから「北の御大」。ふたりの御大の(殺陣の)息・間合い・好みを熟知していく過程で、派閥じゃないけど、そこに絡む人たち(斬られ役)は自然と組み分けされていたんです。僕は「山の御大」を熟知した東映剣会メンバーのひとりでした。