NBA伝説の名選手:スティーブ・ナッシュ 奇想天外なパス捌きと正確無比なシュート力で一時代を築いた名司令塔
【サッカーに着想を得たプレースタイル】 チームメイトたちの得点をお膳立てしてきたパスの数々は奇想天外で、相手守備陣との一瞬の隙を突いたユニークな配球で味方のイージーショットを演出。相手選手との間の取り方や、パスとシュートの線引きも絶妙だった。 また、ナッシュには正確無比なシュート力も備わっていた。エリートシューターを示す指標として知られるフィールドゴール成功率50%、3ポイント成功率40%、フリースロー成功率90%を超えたシーズンが歴代最多の4度もあった。そんな独特のプレースタイルを構築した要因のひとつは、幼少期からプレーしてきたサッカーだったという。 「確かにまったく異なるスポーツだ。サッカーは足、バスケットでは手がメインだからね。でもスペーシングや味方との連係、動き、パス、ディフェンスといった点ではいくつも類似点がある。サッカーで培ったユニークな視点をバスケットへ持ち込んでいなければ、私はNBA選手になっていなかったかもしれない」 引退後、ナッシュの背番号13がサンズの永久欠番になり、2018年にバスケットボール殿堂入り。ゴールデンステイト・ウォリアーズの選手育成コンサルタントとして2017、2018年に優勝チームの一員になり、ブルックリン・ネッツで約3シーズン指揮を執った。今夏にはサンズ時代の同僚ゴラン・ドラギッチ(元マイアミ・ヒートほか)の引退試合に招待され、50歳でコートに立った。 現在、家族との時間を大切にしているナッシュは、子どもたちにバスケットボールを指導しながら、人生も教えている。ただ、この男には豊富な知識と経験が備わっているだけに、バスケットボールの表舞台に舞い戻る日が近いうちに訪れるかもしれない。 【Profile】スティーブ・ナッシュ(Steve Nash)/1974年2月7日生まれ、南アフリカ・ハウテン州出身(カナダ国籍)。1996年NBAドラフト1巡目15位指名●NBA所属歴:フェニックス・サンズ(1996-97~97-98)―ダラス・マーベリックス(1998-99~2003-04)―フェニックス・サンズ(2004-05~11-12)―ロサンゼルス・レイカーズ(2012-13~13-14)●シーズンMVP2回(2005、06)/オールNBAファーストチーム3回(2005~07)●主なスタッツリーダー:アシスト王5回(2005~07、10~11)/フリースロー成功率王2回(2006、10) *所属歴以外のシーズン表記は後年(1979-80=1980)
秋山裕之●文 text by Akiyama Hiroyuki