「カラダの相性」は本当に存在する?性生活にまつわる素朴な疑問、専門家の答えとは
セックス相性という幻想の根底にあるもの
哲学者のアレクサンドル・ラクロワによれば、セックス相性が存在するという思い込みは、ベッドでの行為に関する誤解や偏見に起因している。「人間の性行為は動物と異なり、文化的規範の影響を受けます。映画や小説、ポルノ、そしてこれまでの個人的経験がひとつのシナリオを作り上げるのです」。ほとんどの場合、そのシナリオはフロイド理論とポルノから来ている。哲学者はこれを「フロイドポルノ」と名付けている。この「フロイドポルノ」に従うと、寝室で異性愛者カップルはまず前戯、続いて挿入、前後運動があり、男性がオーガズムに達して終了だ。「これはフロイトの考えに近いのですが、生殖行為の模倣です。フロイトは、前戯に時間をかけることは倒錯的であり、性交は男性の射精で終わって完成すると考えていました」と哲学者。当人たちの嗜好がまったく考慮されていないし、失敗へのプレッシャーも生むシナリオだ。しかも挿入と射精を重視していて女性が愉しむことは二の次とあって、誤解や閉塞感しかもたらさない。2016年に行われたフィンランドでの調査によれば、膣への挿入でオーガズムに達する女性はわずか6%に過ぎない。女性の34%はクリトリスの刺激によってオーガズムを得ていた。そもそもこんなセックスでは、性的充足に不可欠な要素であるコミュニケーションや変化を楽しむ要素がほとんどない。 ではどうすればいいのだろうか。哲学者のアレクサンドル・ラクロワは次のように言う。「ふたりで自分たちのシナリオをつくるのです。相手がどんな好みの持ち主で、それに対して自分がどこまで応じられるのかが明確になれば、どうしたら気持ちの良いセックスができるのかが自ずと明らかになります」 アメリカの性科学者のジャイヤ・マも同様の発想から、自分の性的傾向を知るためのテスト「Erotic Blueprint(エロティックな青写真)」を開発した。性的嗜好には5パターンあり、それぞれ「エネルギッシュ」、「センシュアル」、「セクシャル」、「コケティッシュ」、およびこれら4つの「混合型」があるそうだ。どんな時に性的興奮を感じるかによって分類されており、誰もがどれかに当てはまるはずだと言う。たとえば、「センシュアル」なタイプは愛撫や香りなどで感覚を刺激されると興奮し、「セクシャル」なタイプは裸やこれから挿入するというシチュエーションに萌えるそうだ。 性科学者のジャイヤ・マは、「寝室でやることは誰だって同じとか、誰もが同じ性的衝動を持っているはずと考えるのは誤りです。ひとりひとりが違う人間であり、異なる嗜好を持っているのです」と言う。だから自分やパートナーがどんな好みなのか、対話して知ることは大切だ。どのように相手の欲望に応じられるのかを考えることに繋がるからだ。「どうすれば相手を気持ち良くさせられるかを学ぼうとする気持ちがふたりの相性をよくするのです」と性科学者は言う。