ひどすぎる! 夫の死亡保険金〈1億円〉が「愛人」とその子どもに…書き換えられた「遺言」に絶句する妻に、弁護士が提示した対応策は?
受取人変更のような事態を防ぐための予防策とは
(2) 本事例での対応 本事例では、被相続人の遺言により生命保険の保険金の受取人が変更されており、保険契約の約款に保険法と異なる定めがなければ当該変更は有効と考えざるを得ません。そのため、保険契約の約款において、遺言による保険金受取人の変更について、保険法の定めと異なる規定がされていないか確認することが最初の対応になります。 約款に保険法の定めと異なる規定がない場合、保険金受取人となっている夫の子も法定相続人の一人ですので、夫の子から保険会社に通知がなされれば夫の子に対し死亡保険金が支払われることとなります。そのため、本事例の状況では、死亡保険金が夫の子に支払われることを受け入れざるを得ないでしょう。 2. 保険契約者の変更を検討する 死亡保険金の請求権は保険契約者の払い込んだ保険料と対価関係に立つものではなく、実質的に保険契約者または被保険者の財産に属していたものとみることもできないこと等から、死亡保険金の受取人を変更する行為は贈与または遺贈に当たらないと解されています(最判平14・11・5判時1804・17)。この判例によれば、死亡保険金受取人を変更する行為は、遺留分侵害額請求の対象とならないことになります。 もっとも、上記判例は、相続人以外の第三者に保険金受取人が変更された場合であり、共同相続人間の公平という観点を考慮する必要がない事案であって、特別受益についてまで射程が直ちに及ぶものではないと解されており、後記3.のとおり、特別受益については共同相続人間の公平という観点からも検討する必要があります。 そこで、こうした性質を持つ保険金受取人の変更という事態を避ける手段として、夫の存命中に、夫や保険会社と同意して、生命保険の保険契約者を夫から自身に変更しておくのも一法です。この場合、保険金受取人を変更できる主体は契約者に限られることから、遺言による場合を含め夫の意思で保険金受取人を変更することはできなくなります。 他方、保険金受取人の変更は被保険者の同意がなければその効力を生じないため(保険45)、夫の意向に反した保険金受取人の変更はできず、夫にも一定の決定権が留保されます。 保険契約者の変更に伴う課税関係について、相続税法は、保険事故が発生した場合において、保険金受取人が保険料を負担していないときは、保険料の負担者から保険金等を相続、遺贈または贈与により取得したものとみなす旨規定しており、保険料を負担していない保険契約者の地位は相続税等の課税上は特に財産的に意義のあるものとは考えておらず、契約者が保険料を負担している場合であっても契約者が死亡しない限り課税関係は生じないものとしています。 したがって、保険契約者の変更があってもその変更に対して贈与税が課せられることはありません。ただし、その契約者たる地位に基づいて保険契約を解約し、解約返戻金を取得した場合には、保険契約者はその解約返戻金相当額を保険料負担者から贈与により取得したものとみなされて贈与税が課税されます。
【関連記事】
- 【高級老人ホーム・大恋愛の末路】81歳お金持ちの父「再婚しようと思う」→47歳娘「なんていやらしい!」…その先に待つ家族全員ズタボロの展開
- 愛する孫に〈年110万円〉10年間贈与した70代夫婦…孫が直面した「まさかの事態」【司法書士が解説】
- 【CFPの助言】知らなかった…年金月22万円の66歳男性、年金機構から「年金支給停止」の通知が届いたワケ
- 3億円超の商業ビルを兄弟3人〈共有で相続〉したが…必死で管理・家賃分配する長男に、二男・三男「兄貴、お金ごまかしてない?」からの大バトル〈弁護士が解説〉
- 【税理士が解説】「親が亡くなったら、真っ先にコンビニへ走る」が新常識!相続手続きで困らないためにやるべき、たった一つのこと