梅雨の時期に悪化しやすい“気象病”とは? 医師に聞いた、頭痛など「今すぐどうにかしたい」症状の正しい対処法
病院難民になっている人が多い気象病
上記のように、気象病には気象病の対症療法があるもの。でも現実は、様々な頭痛薬を試したものの効果がなかったり、病院に行ったものの異常は見つからないということで、途方に暮れている人が多いよう。 「気象病による頭痛持ちの人の多くは、まず脳疾患を疑って病院に行くのですが、MRIを撮っても異常は見つからない。気象病患者はめまいも併発することが多いので、そこで今度は『耳が原因かも?』と耳鼻科に行く。ちょうど気圧の影響を受けているタイミングだと、内耳がむくんでいるので『難聴かも』と診断されることもありますが、それも大抵は、気圧が落ち着くと改善するので『違った』となる。そしてまた『異常なし』に舞い戻り、どうしていいか分からなくなってしまう。このパターンをたどる人が非常に多いんです。 ただ女性は生理周期による不調があり、気圧の影響を受けると、生理周期不調と気象病とがダブルで襲ってきます。症状が重いので婦人科に行ったところ、対症療法として五苓散や酔い止めを処方してもらえることもあります。そんなふうにドクターショッピングをしないと、なかなか症状をやわらげてくれる薬にたどり着けない。でも、これはあくまで私の感覚ですが、日本女性の2~3割は気象病の症状がありそうですね。異常が見つからないなら気象病を疑って、気象病外来を訪れてみてほしいと思います」
規則正しい生活なくして気象病改善は難しい
ちなみに寒暖差による不調に悩まされている人は、できる限り温度差を減らすことが症状軽減の鍵になってくると言います。 「“寒暖差アレルギー”という言い方もされていますが、この場合は何かのアレルギーで症状が出るのではなく、寒暖差によってアレルギー様の症状が出るのです。血管運動性鼻炎が正式な病名になります。だからできるだけ体が温度差を経験しないようにすることが大切です。とくに朝晩の気温差が大きい季節は、羽織るものを持って出かけるようにしましょう。またマスクで防護するのも有効です。 寒暖差疲労の症状としてはくしゃみや鼻水、肌荒れなどが多く、花粉症と似ています。花粉症だと思い込んで花粉症用の対症療法をおこなっても、とくに問題はないので安心してください」 このように、それぞれの気象病の症状に合わせた対症療法があるもの。ただし、こういった対策をとっていればあとは何をしてもOK、というわけではもちろんありません。 「全ての気象病症状に対して言えるのは、規則正しい生活を送りましょう、ということです。気象病は自律神経の乱れからきていますが、自律神経は規則正しい生活が好きですから。とくに質のいい睡眠が足りないと、不調が強くなる傾向があります。早寝早起き、適度な運動をして、自律神経を乱さないようにすることは絶対条件です。 気象病外来を訪れる患者さんの中には、生活を正したことで症状がゼロになった、という人もいます。少なくとも生活リズムを正し、第二回でお伝えした日頃からのメンテナンスもおこなって、それでも全く改善しないという人はまずいません。ゼロとは言わずとも、これまでは5だった不調レベルが4になるだけでも劇的にラクになる思いますので、まずは自分が取り入れやすそうなものから始めてみてほしいと思います」
【Profile】久手堅司先生
せたがや内科・神経内科クリニック院長。気象病外来、頭痛外来、自律神経失調症外来など、複数の特殊外来を立ち上げ、とくに天候と不調の関係について様々なメディアで発信している。『面白いほどわかる自律神経の新常識』、『毎日がラクになる!自律神経が整う本』など監修も多数。毎日の気象情報をわかりやすく解説している久手堅先生のTwitterもおすすめ。