貯金はできない…”2回の離婚、3人子育て”をするシングルマザーが直面する現実
習い事や家族旅行は贅沢?子どもたちから何が奪われているのか? 低所得家庭の子どもの約3人に1人が「体験ゼロ」、人気の水泳と音楽で生じる格差、近所のお祭りにすら格差がある……いまの日本社会にはどのような「体験格差」の現実があり、解消するために何ができるのか。 【写真】子ども時代に「ディズニーランド」に行ったかどうか「意外すぎる格差」 発売たちまち6刷が決まった話題書『体験格差』では、日本初の全国調査からこの社会で連鎖する「もうひとつの貧困」の実態に迫る。 *本記事は今井悠介『体験格差』から抜粋・再編集したものです。 事例:アウトドア系は行ったことがない 長谷川陽菜さん 長男(大学生)・長女(小学生)・次女(幼児) 長谷川陽菜さんは二度の離婚を経験し、3人の子どもを育てている。高校を卒業してからずっと、様々な仕事を掛け持ちしながら働き続けてきた。長男と長女は10歳以上離れている。 ──一人目のお子さんが生まれたあとに一度目の離婚をされたという形でしょうか。 そうですね。そのときはほとんど寝ずに働いていました。昼も夜もずっと働いていました。夜は水商売をして、お昼もパートで働いて。ダブルで働いてました。おばあちゃん(陽菜さんの母親)と長男と3人暮らしで、長男はおばあちゃんにずっと見てもらってという感じで。子どもを早くに産んで、まだ若かったので、そういう働き方もできたんですけどね。今はもう夜の仕事は一切してなくて、昼だけなので。 その頃は、長男と一緒にいる時間がほぼなかったので、それはちょっと後悔ですね。仕事ばっかりになりすぎてたんで、オフの時間もないし。今でも悪かったなと思ってます。「お母さんはお金、お金ばっかり言うけどお金ばっかりじゃない」って中学の頃とかに言われてました。私も若かったからそこまで長男の心を読めなくて。だから、2番目と3番目の子に対しては、夜は家にいるようにしています。一緒に寝れる時間はつくろうと思って。 ──今は3人のお子さんと陽菜さんのお母さんとの5人暮らしですか。 そうです。私の母親ももういい歳だし、3番目もまだ小さいし、子どもを一日丸々預けて仕事をするというのは、もうできないですね。でも、私が仕事に行かないと困るじゃないですか。だから、日曜日は元の夫(二人目の元夫)に下の子どもたち二人を見てもらって仕事に行くことも時々あります。 今後もし私の母親がいなくなったときとか考えたら、自分が子どもたちをずっと見ながらだと仕事ができなくなるじゃないですか。だから、そう考えたら、元の夫とも関係を良くしておかなきゃ困るかなという感じです。子どもからしたらやっぱり父親だし、彼も子どもに対しては普通なので。 ──長谷川さんに対しては違ったわけですか。 酒癖ですね。豹変するぐらいだったので。仕事から帰ったらもうずっと休みなく飲んでる感じです。それで、急に怒り出したり、怒鳴ったりとか。あとは、長男は前の旦那の子なんですけど、下の子たちに対するのとで態度が違うというか。気にしすぎって言われたらそうなのかもしれないけど、私からしたらそこが気にかかってしまって。 例えば長男が小学校、中学校になったときのお小遣いも、こっちから言うのはやっぱり気が引けて。向こうから言ってくれたらいいんですけど、してくれなくて。そういうところですよね。だったら、自分も働いてたし、自分のパート代から出せばいいかって。 だから、離婚して色々なストレスは減りました。お金の面でも、私もずっと働いてきてはいるので、もちろん収入は減っているんですけど、何とかなるというか、何とかせざるを得ないという感じですね。 ──今はどんなお仕事をされていますか。 受付です。パートの仕事で、始めてから1年ぐらいですね。少し前までは保険の営業と掛け持ちでやってたんですけど、今はそこを辞めて雇用保険がもうすぐ終わります。なので、もう一つ掛け持ちできる仕事を今は探しています。 保険の仕事は営業のノルマもあるし、人間関係が良くなくて、会社にいるだけで憂鬱という感じでした。私が働いてた2年で8人ぐらい辞めてましたね。外回りがある仕事だったからまだ続けられましたけど。 ──貯金はされていますか。 絶対できないです。してる人もやっぱりいるのかな。でも、最近はもうインスタントラーメンでもなんでも全部が高いから。生活できるだけでいいって思うしかないです。老後の不安もありますけど、目の前のことで精一杯なので。 出費は食費が一番大きいですね。小学生の娘と二人で子ども食堂に行って、お年寄りの方と一緒に折り紙して、ご飯を食べて、帰る、みたいなこともしてますね。お弁当の配布も、情報を見つけてもらいに行ったりとか。ガソリン代もきついので、車の冷房も弱めにしてます。 つづく「子どもにピアノはさせない…シングルマザーが語る「体験格差」のリアル」では、親としてどのような体験をさせたいのか・させたくないのか、困りごとがあるときに相談する相手がいるかどうか、などについて掘り下げる。
今井 悠介(公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン代表理事)