京都大の研究者が教えるアカデミックな「学童保育」 動物の標本に触れ、細胞を顕微鏡で観察
子どもが自ら行きたくなる場所に
本が天井まで並んだライブラリー、広い遊戯室など、通常の学童にはないさまざまな魅力的なエリアがありますが、どのようなコンセプトでつくられたのでしょうか。 「京都大学の卒業生の建築士や企業関係者に施設のデザインや家具の製作を担当していただきました。コンセプトは子どもたちが伸び伸びと自由に過ごせる空間です。そのコンセプトのもと、親が仕事だから仕方なく行くのではなく、子どもが自ら行きたい場所にしたいという思いで、内装やインテリアに気を使っています。例えば、子ども向けの施設によくあるイラストや注意書きが描かれた張り紙やカラフルなインテリアなどは、あえて取り入れていません。というのも、休日は親と過ごしている友達が多いなかで、学童に行くことで寂しい思いをしている子、学校や塾などで時間に追われて疲れている子がいるかもしれません。なるべくそうした思いをしなくてすむように、自分の家のようにくつろげる空間づくりを意識しています」 子どもたちが過ごす1日のスケジュールも工夫がされています。 「アカデミックプログラムは1日の決められた時間に実施しているものの、子どもたちの意思で自由に参加できるようにしていますし、保育スタッフも、子どもがそれぞれ思い思いの時間を過ごせるよう、見守りはしっかりしつつ、過干渉になりすぎないよう、適切な距離を保つような保育方針をとっています」 利用は、事前登録したうえで、利用したい日ごとに申し込みをする方法。1日の定員は35人で、現在約600人が登録しており、人気のプログラムは、定員がすぐに埋まってしまうこともあるとのこと。 最後に山下さんが今後の展望を語ってくれました。 「京都大学の育児中の研究者が安心して研究に専念できる環境をさらに充実していきたいと思います。また、ここを利用した子どもたちが将来の進路を選択するきっかけになってくれればうれしいですね」 将来、運営が軌道に乗ったら積み上げた教育プログラムのノウハウを学外に広める活動も考えているとのことです。すでに多数の他大学や企業関係者が視察に来ていることからも、注目の高さがうかがえます。 そのほか、就学後の学童保育を学内に初めて設置した名古屋大学は、2009年にもともとあった学内保育所の2階に開設しました。21時までの延長保育が可能なほか、名古屋大学の資源を生かして科学と触れ合える実験や国際交流ができるイベントなどが開催されています。 大学の資源を生かした新たな学童保育モデルは、今後ますます広がっていくことが望まれます。
朝日新聞Thinkキャンパス