スニーカーブランド「ヴェジャ」が広告費をかけずに成長を続ける理由
WWD:あなたは主に生産面を担っているが、「ヴェジャ」の理想のサプライチェーンとは?
モリィヨン:理想は100%オーガニック素材で製造することだ。工業型の農地ではなく、小規模なオーガニック農地から素材を調達したい。現在コットンは、ブラジルとペルーで生産されたオーガニックコットンを直接仕入れている。ラバーはアマゾンの天然ゴムで、こちらも生産者から直接仕入れるサプライチェーンができている。次の課題は、サトウキビ由来のEVAだ。ブラジルではサトウキビが育たないためまだ直接のルートができていない。まだまだやるべきことはたくさんある。
「サステナビリティとコストはトレードオフの関係にはない」
WWD:他社からは物価高や生産コストが上昇し、サステナビリティに投資できないという話も聞く。
モリィヨン:一時期は商品の値上げをせざるを得なかったのは私たちも同じだ。ただ「ヴェジャ」にとって、サステナビリティはトレードオフの関係にない。サステナブルな解を探す作業は、私たちには純粋な楽しみなんだ。サステナビリティをコンプライアンスに準ずるための制約と捉えている他社と大きく違う部分だと思う。解を見つけるためには生産者との距離感はすごく大事で、10年ほど前には私はパリからブラジルに引っ越した。現地で素敵な工房と出会って、この人たちとどうやったら一緒に仕事ができるだろうかと試行錯誤していた延長で今のチームが出来上がった。
WWD:現在70カ国以上でビジネスを展開している。ビジネス規模を拡大しながらも透明性を担保し続けられる秘訣は?
モリィヨン:確かに最初は会社の規模が大きくなるにつれ、自分たちが貫いてきた倫理とのバランスが取れなくなるのではないかと心配だった。でも実際はその逆で規模が大きくなればなるほど、理想に近づくことができる。生産者に払う賃金も増やすことができるし、革新的な素材の開発のためにプロフェッショナルな人材をチームに迎えられているのもビジネスの成長があってこそ。それから、革新的な素材を使うためにはある程度の量を扱う必要がある。「ヴェジャ」が採用しているリサイクルポリエステル糸は、生産拠点のブラジルで地元の廃棄ボトルを回収し、そこから自社工場で100%廃棄ボトル由来の糸を製造している。一般的なリサイクルペットボトル由来のポリエステル糸では、そのペットボトルがどこから来たのかわからない場合が多いし、リサイクル糸を作るためにペットボトルを生産しているという本末転倒な話も耳にした。そこでブラジルの人々と連携し2年ほどかけて今の形を実現できた。ビジネス成長と比例して、より洗練されたサプライチェーンが構築できる。