2024年は円高の一年に
急速な円高進行は市場の過剰反応
植田日本銀行総裁が7日に国会で行った「年末から来年にかけて一段とチャレンジングな状況になる」との発言が、早期のマイナス金利政策解除を示唆するものとの解釈が金融市場で一気に広がった。そのため、7日の国内市場では長期国債利回りが大幅に上昇し、円高ドル安が進んだ。その流れは海外市場でも続き、同日の米国市場では一時1ドル141円70銭と、今年9月以来の水準まで円高が進んだ。 8日の東京市場でも早期のマイナス金利政策解除の観測がなお燻ぶり、長期国債利回りはさらに上昇し、為替市場では1ドル143円台の水準が続いている。 植田総裁の発言が、早期のマイナス金利政策解除を市場に織り込ませるために日本銀行が意図的に送ったメッセージとの解釈には無理があると考えられる(コラム「植田総裁発言で早期利上げ観測が浮上か」、2023年12月7日)。市場の反応は過剰だと思われる。
為替レートの方向性は日銀ではなく米国の金融政策で決まる
他方、米国では、利上げ打ち止め観測から来年の利下げ観測が徐々に市場に織り込まれる中、長期国債利回りは大幅に低下し、10年利回りは10月の5%超えから、今や4%割れも視野に入る水準にまで低下している。 このように、昨年来の大幅なドル高円安の主因であった、米国の金融引き締め、長期国債利回りの上昇というファンダメンタルズは既に変化している。そうした地合いのもと、植田総裁の発言が、円高ドル安の動きを増幅させる市場の材料に使われた、という面もあるだろう。
10月の1ドル151円台が円安のピーク
米国では、物価上昇率の低下傾向は明確に確認されている一方、金融緩和の引き金となるような景気減速の明確な兆候はまだ確認されていない。このため、今後発表される経済指標が上振れることで、利下げ観測がやや後退し、長期金利上昇と円安ドル高方向に揺り戻しが生じる可能性は残されている。 しかし、それでも10年利回りが再び5%の水準に達する可能性は低いだろう。それを踏まえると、ドル円レートが1ドル150円台まで戻る可能性はかなり低下した。10月の1ドル151円台が円安のピークになった可能性が高いだろう。