2024年は円高の一年に
米国の利下げと日本銀行のマイナス金利政策解除は相容れない点に注意
日本銀行の政策修正観測によって、円ドルレートが振られる状況は今後も続くだろう。しかし実際には、日本銀行のマイナス金利政策解除の時期は、金融市場の強いコンセンサスである来年4月ではなく、来年後半あるいはそれ以降までずれ込む可能性を見ておきたい(コラム「日銀短観(12月調査)で景況感は小幅改善か:2024年日本経済は「内憂外患」。賃上げは期待に届かず日銀政策修正は後ずれへ」、2023年12月7日)。その場合、来年の円ドルレートの方向性を決めるのは、日本銀行の政策よりも、米国の金融政策となるだろう。 足もとでは、米国で利下げ観測が浮上する中で日本銀行の早期のマイナス金利政策解除の観測が同時に浮上したため、日米金利差の縮小が進むとの見方でやや急速な円高となった。しかし、米国の利下げと日本銀行のマイナス金利政策解除とは、本来、相容れないものだ。米国で利下げが実施され、また実施の観測が強まる中では、日本銀行は円高進行のリスクに配慮して、政策修正を先送りする可能性が高まるはずだ。 この点を踏まえると、この先、米国経済の減速の兆候が明確に確認され、米国での利下げ観測が強まれば、それ自体が日本銀行のマイナス金利政策解除の時期を後ずれさせるとの観測を浮上させるだろう。その結果、足もとほどの日米金利差の急速な縮小観測は生じず、足もとほどの急速な円高が生じるわけではないだろう。
2024年末時点での円ドルレートは1ドル130円~135円
2024年は米国景気の減速と利下げを主因に、円高ドル安が進む1年になると予想したい。2024年末時点での円ドルレートは1ドル130円~135円と見ておきたい。現在、金融市場は2024年中に米国の利下げ幅は1.0%程度に達することを織り込んでいる。実際の利下げ幅が1.5%~2.0%とより本格的な利下げとなる場合には、2024年末で120円台までの円高の可能性も出てくるだろう。 他方、米国経済の減速がマイルドなものに留まり、利下げ幅が1.0%未満に留まる場合には、2024年末の円ドルレートは140円前後となる可能性も考えられる。 さらに向う数年間を視野に入れれば、日本銀行の政策修正が進み、その結果、円ドルレートは均衡水準と考えられる1ドル110円~115円程度まで、円安修正が進むものと見ておきたい。 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
木内 登英