人工赤血球製剤で離島やへき地も救え 奈良県立医大病院が治験を本格化へ
救命率向上へ 実用化に世界の目が注がれる
松本教授は「うまく実用化することができれば、貧血の病名で使えるように承認を受けたい」と話す。貧血は医師の裁量で広く診断でき、外傷や交通事故のような外的要因だけでなく、がんやその他の疾患、出産時といった幅広い分野での応用ができるためだ。
また、「使うとすれば最大800ミリリットルを想定している。救急医療ができるような大病院までの搬送が終えれば、そこで日赤の献血で輸血できる。搬送の間に投与することができれば良い」としている。ドクターカーやドクターへリなどでの搬送中の投与であれば、医師の指示の下、救命救急士も行うことができるため、より一層救命率をあげられる可能性がある。
関西の複数の医学部を経て着任した笠原教授は「県立大学で1から10まで完結させる。これは奈良県民のためにも成功させなければならないという気持ちでやっている。人口減少の中で、関西の医学部も淘汰される時代がやってくるはず。大学の生き残りをかけている」と意気込む。
多数の研究者が失敗してきた人工赤血球製剤の実用化を図れるか、世界の目が注がれている。献血をうまく有効活用するという「もったいない」の心で、日本発の技術が広まることに期待したい。 滝山展代/サイエンスポータル編集部
◇8月20日追記 本文の一部を訂正しました。 7段落目) 誤「この処理を経た後、脂質の粉末を加え、脱一酸化酸素、脱酸素の工程を施し、「デオキシ型ヘモグロビンベシクル」という人工赤血球製剤が完成する。」 正「この処理を経た後、脂質の粉末を加え、脱一酸化炭素、脱酸素の工程を施し、「デオキシ型ヘモグロビンベシクル」という人工赤血球製剤が完成する。」