《焼き鳥で”世界制覇”》「鳥貴族」が本気で海外進出へ…「世界の一風堂」をつくった男が描く大胆戦略
国内600店舗を超えた焼き鳥チェーンのトップ「鳥貴族」が本気で海外進出に走り出した。2024年5月に社名変更をすると同時に、ロサンゼルスはじめ、台湾、韓国、香港、上海に進出を決め、来年は東南アジア各国に出店を始める。 【写真】戒厳令そっちのけ!?…現地でにぎわう韓国の「鳥貴族」 「2030年に海外500店舗」を掲げ、寿司、和食、ラーメンなどと比べると海外ではまだ未知数の焼き鳥を広めていくというのだ。はたして勝算はあるのか。 前編記事『《2030年に海外500店舗!》「鳥貴族」が本気で海外進出へ…「日本の焼き鳥」が“世界を制覇”する日』よりつづく。
フラットな組織で海外進出を目指す
10月15日、大阪淀屋橋に移転したEHG本社で大倉社長にインタビューした。新オフィスはアドレスフリー、ラフな恰好の大倉社長も毎日執務するデスクを転々とする。役員含め社員の服装は全員ビジネスカジュアル。京セラ創業者・故稲盛和夫氏の“アメーバ経営”を取り入れており、社員間の上下関係を排し、フラットに自由闊達に仕事ができる環境をつくった。 海外展開もトップダウンではなく、大倉社長の「ゆくゆくは海外に出たい」という思いが膨らみ、それがキーマンからキーマンに伝わり、数名の海外進出戦略チーム(小集団組織)が出来上がった。まさにアメーバ経営的な組成で、リーダーはもちろん大倉社長。いつごろから大倉社長は海外への思いを抱き始めていたのだろうか。 「私自身が海外に視察に行き始めたのは2018年です。やはりアメリカにまず出してみたいという夢がありました。市場も大きいですしね。ニューヨークとLAなどの西海岸を交互に行っていたんです。じっくり展開するんだったら、焼き鳥店がすでに浸透していた西海岸のほうにまず出してみたいなと…」
“意中の人”は「世界の一風堂」をつくった男
実はその頃から「海外に出ていくには、この人と組みたい」という“意中の人”がいた。当時はラーメンの「一風堂」を率いる力の源カンパニーの代表取締役社長として活躍していた清宮俊之氏だ。 清宮氏は“ラーメン業界のカリスマ”と呼ばれた創業者の河原成美氏に見込まれ、「TSUTAYA」グループのCCC(カルチャー・コンビニエンス・クラブ)から2011年に力の源カンパニーに移り、3年後の2014年に社長に昇格、2017年には東証マザーズに株式上場を果たしている。 清宮氏が力を注いだのはやはり「一風堂」の海外展開。2014年、パリで「一風堂」が中心になり“ラーメンウィーク”というイベントを開き、一躍欧米での知名度を上げた。それを機に世界各国に出店し、一時は70店舗近くまで海外店舗を増やした。 大倉社長はそんな清宮氏を「鳥貴族を海外に持っていく開拓者」として白羽の矢を立てたのだ。2018年頃から大倉社長は福岡に河原氏を訪ね、清宮氏と三人で会食を重ねた。ちょうど「鳥貴族」が福岡に進出するタイミングでもあった。 そして2019年、清宮氏が力の源ホールディングス社長を退任するとすぐに河原氏に断りの挨拶を入れ、鳥貴族社外取締役として迎えた。こうして“鳥貴族海外進出戦略チーム”のアメーバ組織が誕生した。清宮氏の胸の内には「早く大倉さんの夢である米国西海岸進出をサポートしたい」という思いが沸いたに違いない。 しかし、2020年になってコロナ禍が襲来し、その思いをプロジェクトに落とし込むのは社外取締役2期目に入る2021年からとなった。チームには「一風堂」時代から協業してきたミュープランニングの小吹雄一郎氏も加わった。 2022年10月に清宮氏は取締役COO海外進出担当に。23年3月にはTORIKIZOKU USA INC.代表取締役CEOに就任、「米国進出の夢」の土台をつくった。 そして、コロナ禍が明けたタイミングを見はからって、LAの人気焼鳥店「HASU」を事業譲受。米国進出第1号店の準備を完了した。年が明けた2024年5月に社名を変更し、“Global YAKITORI Family”のビジョン発表に至るわけだ。