日立の新社長は「創業の地からやって来た大本命」 日立で生まれ育った男が、日立のトップにまで上り詰めた
日立に生まれ、日立で育った男が、日立のトップにまで上り詰めた。 日立製作所が12月16日に社長交代を発表した。IT事業部門のトップを現在務める德永俊昭副社長(57)が2025年4月に社長に就任する。2021年6月に就任した小島啓二社長(68)は副会長となり、現会長の東原敏昭氏(69)は留任する。 【データを見る】次期社長の德永氏が買収を成功に導いたグローバルロジックの売上高は右肩上がり 次期社長に抜擢された德永氏は、日立きっての”プリンス“というべき人物だ。 現社長の小島氏は発表当日の記者会見で、「德永さんは創業の地(茨城県日立市)からやってきた大本命。日立を次のステージに導いてくれると確信している」と手放しで褒めそやした。
■最大の実績はグローバルロジック買収 德永氏は1967年(昭和42年)の生まれで茨城県日立市出身。日立に勤めた父を持ち、日立の創業以来8人の社長を輩出した東京大学工学部を卒業している。 1990年の日立入社後はIT畑をシステムエンジニアとして歩み、2017年に50歳で当時の家電事業会社の社長に就いた。ここで経営の経験を積み、2019年に日立本体の常務、2020年に専務、2021年に副社長とトントン拍子で昇進した。
経営幹部が「どんな問題が出ても臆せず飛び込むタイプ」「周囲の意見を聞く耳がいい」と評する德永氏。最大の実績は約1兆円の大型買収と、買収後の統合作業を成功させたことだ。 日立は2021年にアメリカのIT企業、グローバルロジックを約1兆円で買収している。同社の開発した代表的なサービスには、マクドナルドが世界中の店舗で採用しているセルフオーダーシステムがある。顧客には世界的な企業が並ぶ。 德永氏は買収を決断した当時に社長だった東原・現会長から買収先の選定を任された。「売り上げがたった1000億円台。そんな会社をなぜ1兆円で買うのか」。当初は取締役会でそんな批判を浴びたが、東原氏と買収成立に向けて説得した。
買収後は日立側の責任者として日立本体とグローバルロジックとの融合を進めていった。その結果、グローバルロジックは買収当時から売上高が2.5倍に成長している(下図)。 現在はその延長線で日立全体の成長戦略の要であるIT事業全体を担当し、「ルマーダ化」を推進する重役を担っている。 さらに今年4月からは、新たに「成長戦略担当」という新たな職務も追加された。現在の中期経営計画は2024年度末が期限。德永氏はさらにその先の2027年までの計画策定を進めてきた。