TikTok、今後の欧州での「罰金」に備えて1500億円準備か
アイルランドのデータ保護当局は昨年9月、中国のSNS大手Bytedance(バイトダンス)が運営する動画アプリTikTok(ティックトック)の現地法人に、TikTokを利用する子どもたちの個人情報を適切に保護しなかったとして3億7000万ドル(約550億円)もの罰金を科した。TikTokにとってこれは痛烈な一撃となり、同社は今、このような罰金が今後も科されることを予想していることが書類からうかがえる。欧州のデータ保護当局から科される可能性のある罰金をカバーするために明らかに10億ドル(約1500億円)を準備している。 中毒性のある設計やユーザーデータの取り扱い、10代のユーザーを保護する安全策の欠如をめぐり、TikTokは世界中の規制当局から次々と訴えられ、調査の対象になっている。直近では、米13州と首都ワシントンD.C.の司法長官が、TikTokは意図的に中毒的な設計になっており、子どもや10代の若者に害を与えたとして提訴した。 今後の罰金に備えて10億ドルが準備されていることは、事業所の設立登記などを行う英国のカンパニーズ・ハウスに最近提出されたTikTokの欧州事業の会計報告書で明らかになった。この報告書には、TikTokの欧州での収益が2022年の26億ドルから昨年は45億7000万ドルに急増したことも示されている。損失は2022年に5億1200万ドルだったのが2023年には13億ドルと3倍近くになっている。 報告書には「EU一般データ保護規則(GDPR)の解釈はまだ流動的で、データ保護当局による調査を踏まえた措置は見直される可能性がある」ため、罰金がいくらになるかは明確ではないと書かれている。 欧州でTikTokが直面する罰金と罰則の総額は、2023年の会計で準備した10億ドルを超える可能性がある。欧州委員会(EC)は今年2月にデジタルサービス法(DSA)に基づいてTikTokの調査を開始した。欧州連合(EU)はDSAに違反した企業に対し、最大で世界の売上高の6%に相当する罰金を科したり、禁止措置を取ったりすることができる。