内閣府の基調判断は2023年5月以来の上方修正…地震や台風は「8月の景気」にどう影響したか【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】
「地震or震災」関連コメント数が東海、近畿、四国などで増加
8月8日に気象庁が、日向灘(宮崎県東部沖合の海域)を震源とする最大震度6弱の地震を受け、初めて「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を発表しました。 内閣府が、景気ウォッチャーの見方としてまとめた基調判断で、6月に「また、令和6年能登半島地震の影響もみられる」が削除され、7月までの「地震or震災」関連判断DIからみても、能登半島地震の景気への影響は小さくなっていました。 7月では「地震or震災」関連の現状判断DIは53.1、先行き判断DIも同じ54.2と6月の60台より低下しましたが、景気判断の分岐点50.0を上回りました。コメント数は、現状8名、先行き6名と1ケタで、すべて北陸の回答でした。 宮崎県の地震が発生し、「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を発表された8月では「地震or震災」関連の現状判断DIは48.4、先行き判断DI47.7で、ともに景気判断の分岐点50.0を下回りました。コメント数は、南海トラフ地震の影響が懸念される、東海、近畿、四国などで増加し、全国では現状78名と大幅に増加しました。ただし、先行きは32名と現状に比べ、少なくなっています。 中国の高級レストラン・事業戦略担当は「南海トラフ地震臨時情報からお盆期間のキャンセルが多く、キャンセルがなければ景気はやや良いくらいであった」とコメントしています。四国のスーパー・人事担当者の「地震および台風の防災として、水などの備蓄品を求めた客が殺到し、特需が生まれた」とのコメントもありました。 「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」の景況感に与える影響は総じてみれば比較的軽微であった感じがします。
自動車メーカーの型式不正問題の影響
トヨタ自動車は、認証不正問題で6月から3ヵ月間、「ヤリスクロス」「カローラフィールダー」「カローラアクシオ」の3つの車種を生産停止にしていました。当初は9月2日の生産再開を予定していましたが、台風10号の接近によって部品の調達が遅れたため、4日夕方から生産が再開されました。 6月では現状判断で11名、先行き判断で15名「不正」というワードを使ったコメントが出ましたが、ダイハツ工業など一部自動車メーカーの不正問題が影響した23年12月の現状判断17名、先行き判断26名よりは少なめでした。6月の「不正」関連判断DIを作成すると、現状38.6、先行き45.0とどちらも景気判断の分岐点50を下回る内容ですが、12月よりは幾分良いDIでした。 8月の「不正」関連判断DIからみれば、マイナス影響はなくなった模様 7月では現状判断で6名、先行き判断で6名が「不正」というワードを使ったコメントを出しました。7月の関連判断DIを作成すると、現状41.7、先行き50.0になりました。コメント数は8月では減少しました。現状判断で1名、先行き判断で5名にとどまりました。8月の「不正」関連判断DIを作成すると、現状50.0、先行き65.0になりました。8月では、自動車型式不正問題の景気へのマイナスの影響は、なくなったといえる状況です。