トヨタ スープラ2.5GTツインターボは、今乗っても“超痛快”だった 80年代を象徴する1台に迫る
トヨタが持てる技術を総動員
この2.5リッター直6ツインターボは、1990年のマイナーチェンジで3.0リッター直6に代わって設定されたエンジンで、280psの最高出力は当時の自主規制値の上限。あの頃、これよりパワフルなエンジンは存在しなかった。自分はいま、1990年時点での日本の最高到達点に立っている。 野蛮ではない、と、記したけれど、それも道理で、A70型スープラは、ほぼ同時期にデビューした 2代目「ソアラ」と並行して開発されている。4輪ダブルウィッシュボーンサスペンションやパワートレインは基本的には両車共通で、ハイソカーブームの真っ只中、トヨタが持てる技術を総動員して開発したのがこのスープラとソアラなのだ。 インテリアのクオリティがジャンプアップした理由も、こうした経緯を知れば納得できる。 屋根を取り外すことができるエアロトップ仕様だったこともあってか、コーナリング中にボディ各部からミシミシという音が聞こえたので、コーナーでは丁寧な操作を心がける。とはいえ、ブレーキはただ減速するだけでなくペダルの踏み応えもカチッとしているし、ハンドル操作に対してノーズはスムーズに向きを変える。 強力なエンジンと素直な操縦性の組み合わせは、気のいい大型犬を思わせるキャラだ。ヒリヒリするようなスリルを味わうのではなく、安心して高性能を発揮できると感じさせる懐の深さは、セリカXXにも通じる。同時に、キャラこそ共通しているけれど、80年代から90年代にかけて、階段を2段飛ばしか3段飛ばしで駆け上がっていたこともよ~くわかる。内装の質感だけでなく、加速やハンドリングといったパフォーマンスが、格段に向上しているからだ。 スープラだけでなく、日産の「スカイランGT-R」(R32)や初代ホンダ「NSX」など、この時期に日本の自動車技術は大きくステップアップしていたのではないか。そんなことまで考えさせる富士スピードウェイホテルの「Supra Summer Festival」は、なかなか奥の深い企画だ。担当者によると、車種はまだ秘密とのことだけれど、続編を企画しているという。 そしてスープラの垂直テイスティングもいよいよラスト、A80のスープラに乗り換える。
文・サトータケシ 写真・小塚大樹 編集・稲垣邦康(GQ)