明らかになりはじめた戒厳令の裏側、尹錫悦大統領を突き動かしたのは陰謀論好きの政治系YouTuberだった可能性
■ 真っ先に軍隊を投入した先が中央選管だった理由 尹錫悦(ユン・ソンニョル)韓国大統領の「失敗した戒厳令」に対する新しい事実が続々と明らかになってきた。 【写真】どう動く?韓国与党・国民の力の韓東勲代表 尹大統領が非常戒厳令を宣布した理由の一つに、保守層の一部から指摘されている「不正選挙疑惑」に対する執着があったようだ。尹大統領が不正選挙の証拠を確保するため、中央選挙管理委員会に兵力を送ってサーバーを捜索しようとしたという事実が明らかになったのだ。 5日の夜、地上波放送局のSBSが「非常戒厳令が発表された直後、中央選挙管理委員会に武装軍人が投入された」と単独スクープした。報道によると「3日夜、非常戒厳が宣言された時、国会議員が集まっていた国会よりも早い時間帯に戒厳軍が投入された場所が中央選挙管理委員会だった」という。大統領に戒厳を建議した金容賢(キム・ヨンヒョン)元国防部長官は、SBSの取材陣に対し、「不正選挙疑惑を捜査するための措置だった」と明らかにしたという。 韓国の保守支持者の間では文在寅政権時に実施された2020年4月の総選挙について、投開票直後から「不正選挙」との疑惑が絶えず提起されてきた。20年4月の総選挙の結果は、「共に民主党」(以下民主党)などの進歩勢力が180議席、未来統合党(現国民の力)が103議席で、民主党の圧倒的な勝利だったが、両政党の全体得票率を見れば49.9%対41.4%で、その差はわずか8.5%だった。 小選挙区制の韓国では選挙区ごとに最多得票者1人だけが当選するが、この当落に決定的な役割を果たしたのが「期日前投票」だった。優勢と見られていた保守候補たちが、期日前投票箱の開票が始まった途端、民主党候補にわずかな差で次々と逆転されて、落選していったのだ。 このため保守系の政治YouTuberたちが中心になって「中央選挙委員会が選挙結果を操作した」という疑惑を提起した。当時は文在寅政権で選挙を管轄する中央選挙管理委員会の委員たちが進歩的な人物が多かった時代だ。ここに「接戦地域の票差が一定のパターンを見せている」という統計専門家まで登場して疑惑を煽り、選挙で敗れた未来統合党の候補らが中央選挙管理委員会を「告発」するまでに至った。