「2050年に地球温暖化による破局が来る!」と怯える前に、酸素と水と食料の現実の話をしよう
驚くまでもないが、この研究の結論は以下のようなものだった。すなわち、これらの限界をすべて尊重したなら、世界の食料生産システムが、1人当たり約2400キロカロリーのバランスの取れた日々の食事を提供できるのはせいぜい34億人だが、農耕地を再配分し、水と養分を今よりもうまく管理し、食品廃棄物を減らし、食生活を調整すれば、102億人を養えるという。 ● 「2030年あるいは2050年に 世界は温暖化で破局する」はウソ 呼吸と水分摂取と食物摂取という、生きていくうえで必須の3要素を、このように正しい情報に基づいて眺めてみると、結論は一致する。 2030年あるいは2050年〔IPCCが二酸化炭素削減の指標とした年で、2030年に2019年のCO2排出量から48%、2050年に99%の削減を提示している〕までに破局を迎える必然性はない。 酸素は、依然として豊富であり続ける。水の供給に関する懸念は多くの地域で増大するが、それはあらかじめわかっていることなので、命を脅かすような大規模な不足をすべて回避するのに必要な手段が講じられてしかるべきだ。 そして、私たちは低所得国での1人当たりの平均的な食料供給を維持するだけでなく改善する一方、富裕国では過剰な生産を減らすべきだ。とはいえ、これらの措置を取っても、世界人口を養うための食料生産における、化石燃料補助への直接的・間接的依存を軽減することはできても、なくすことはできないだろう。 そして、化石燃料の使用の削減は、迅速に行うことはできない。つまり、今後何十年にもわたって、化石燃料の燃焼が世界の気候変動の原動力であり続けるということだ。では、それは地球温暖化の長期的な傾向にどのような影響を与えるだろうか? 地球温暖化が引き起こす海面上昇の害を真っ先に受けるのは必然的に、沿岸の低地全般、特に太平洋の島嶼国だと、あなたは何度聞かされたことだろう? それにもかかわらず、フィジーの北、ソロモン諸島の東に位置する太平洋の環状珊瑚礁島国家ツバルの全101島で40年間に見られた海岸線の変化を最近分析したところ、この国の陸地面積がじつは3%近く増えていることがわかった。先入観に基づき、軽率に一般化して結論を下すことは、常に避けるべきだ。
バーツラフ・シュミル/柴田裕之