「2050年に地球温暖化による破局が来る!」と怯える前に、酸素と水と食料の現実の話をしよう
つまり、1人当たりの水の使用量は40%近く減少し、アメリカ経済の水集約度(実質GDPの単位当たりの水の単位)は76%下がり、灌漑に使われる水の合計量は2015年にはじつはわずかに減ったので、農地の単位面積当たりの使用量は3分の1近く少なくなった。 当然ながら、こうした水の使用のすべてで、さらなる削減を行うのには物理的な限度があるが、このアメリカの実例は、大幅な改善の余地があることを示している。 飲料水の不足は、脱塩によって緩和することができる。太陽熱蒸留から半透膜の利用まで、さまざまな手法で海水から塩分を取り除くのだ。 この選択肢は、多くの水不足の国で一般的になってきており、世界中におよそ1万8000か所の海水淡水化プラントがあるが、貯水池やリサイクルから供給する淡水よりも、コストがかなり多くかかる。 ● 降水量が1~2割減っても 農作物の収量はアップする!? 作物に必要な水の量は、飲料水よりは桁違いに多い。そして、世界の食料生産は、今後も降雨に頼り続けることになる。やがて来る温暖化した世界では、十分な雨が降るだろうか? 光合成は常に、葉の中の水と大気中の二酸化炭素との、極端に不均衡な交換だ。植物は、光合成のために十分な炭素を取り込もうとして葉の裏側にある気孔を開くたびに、大量の水を失う。 たとえば、小麦全体の蒸散効率(単位当たりの水で生み出されるバイオマス)は、1キログラム当たり5.6~7.5グラムであり、これは、穀物の収量1キログラム当たり約240~330キログラムの水という計算になる。 水循環は地球温暖化によって否応なく盛んになる。気温が上がると蒸発量が増えるからだ。その結果、全体として降水量が増し、したがって、集めて、溜めて、使うことができる水も多くなる。 ところが、全体として降水量が増加しても、あらゆる場所で降水量が増えるわけではないし、これまた重要なのだが、水が最も必要とされるときに雨が多く降るわけでもない。気候の温暖化に関連した他の多くの変化と同じで、降水量の増大も場所によってばらつきがある。 今日よりも雨が降らなくなる地域もあれば、中国の厖大な人口の大半が暮らしている長江流域など、大幅に降水量が増す地域もあるし、この増量は、水ストレスの高い環境に住んでいる人の数のわずかな減少につながることが見込まれている。