「2050年に地球温暖化による破局が来る!」と怯える前に、酸素と水と食料の現実の話をしよう
降水量が増える場所の多くでは、降水が不規則になる。雨や雪の頻度が減るものの、1回の量が増え、壊滅的にさえなるだろう。 大気が暖まると、植物からの水分の喪失(蒸発散量)も増えるが、作物や森林が水を失って弱るわけではない。大気中の二酸化炭素濃度が上がれば、暖かくて二酸化炭素が豊富な生物圏が出現し、単位収量当たりに必要な水が減る。 この効果はすでに一部の作物で測定されており、最も一般的な光合成経路に依存する主食穀物である小麦と米は、それほど一般的ではないけれど、本質的により効率的な光合成経路を使うトウモロコシやサトウキビよりも、水の利用効率の上昇幅が大きい。つまり、一部の地域では、降水量が10~20%減っても、小麦などの作物から、今日以上の収穫が得られる可能性があるのだ。 ● 温暖化が進んだ2050年でも 100億人以上を養うことが可能 世界の食料生産は、地球温暖化を助長する微量ガスの重大な発生源でもある。ここで言う微量ガスは主に二酸化炭素であり、特に南アメリカやアフリカで依然として行われているように、森林や草地を農地に変えるときに発生する。そして、反芻する家畜が吐き出すメタンがそれに加わる。 だがこの現実は、改善や調整の機会も提供してくれる。毎年耕す量を減らしたり、耕すのをやめたりして、土壌中の有機物を増やし、それによって炭素の貯留量も増やすような形で作物を栽培することもできるだろうし、牛肉を食べる量を減らして、牛が吐き出すメタンを削減することもできるだろう。 私の計算では、将来、牛肉の割合を下げ、豚肉と鶏肉、卵、乳製品の割合を上げ、餌をより効率的に与え、作物の残滓や食品加工の副産物をもっとうまく利用すれば、近年の世界的な食肉生産量を減らすことのないまま、メタンの放出も含め、家畜による環境への影響を大幅に抑えることができる。 より視野を拡げると、2050年を過ぎて間もなく到達することが見込まれる100億という将来の人口を、4つのプラネタリー・バウンダリーの範囲内で養うことができるかを、ある最近の研究が検討した。 つまり、地球とその住人たちを、生物圏の一体性、土地の利用、淡水の利用、窒素の循環の4つの点で限界を踏み越える瀬戸際まで追い込まずに、人々を養えるかを問うたのだ。