交差点のある8の字コースでレース……ってそりゃぶつかって当たり前! クラッシュが醍醐味の超おバカレースがアメリカに存在した
接触やクラッシュが多発するデンジャーなレース
レース観戦の醍醐味はレーサーの華麗なドライビングテクニックや、手に汗握るコーナリングバトルなどさまざまな魅力があるものです。が、なかにはクラッシュシーンにゾクゾクするなんて方も少なくないようです。 【画像】アメリカで熱狂的なモータースポーツのひとつでもある「デモリッションダービー」のレース様子などの画像を見る そんなアナタにおススメしたいのがアメリカで一部人気を博している「フィギュア8レース」。どんなレースかというと、まずコースレイアウトが8の字を描いており、しかもレースカーが2台並ぶのが精いっぱいなくらいの道幅。つまりは、交差点がある狭い道でレースをするわけで、接触やクラッシュがしょっちゅう起こるという「おバカな」レースにほかなりません。 観客はビール片手にキャーキャー楽しんでいますから、これまたレースの醍醐味といっても差し支えないかもしれません。 フィギュア8レースは、ストックカーレースの一種で、クルマが意図的に交差するコースで開催されています。クロスオーバー、あるいはXと呼ばれる8の字の中央を横切るため、どうしても衝突や接触のリスクは高まるというもの。とはいえ、このクラッシュを楽しみにしている観客がほとんどとのことで、北米とカナダでは一定の人気を勝ち得ているそうです。 もっとも、このレースが始まった第二次大戦直後は、高架による交差点が設定されていたとのこと。この常識を破って、エンタメ化したのが1941年にオープンしたインディアナポリス・スピードロームというフィギュア8専用コース。インディ500が開催されるインディアナポリス・スピードウェイとはまったく別のコースですので、お間違えなく。 コースの全長が0.2マイル(約322メートル)ですから、あっという間に1周しちゃう距離。それゆえ、レースは団子状にクルマが連なりがちで、前述のとおり道幅が狭いからあちこちで接触、コースアウトが頻発するわけです。とはいえ、重大な事故となることは稀であり、たいていのマシンがすぐさまコースに復帰するのもフィギュア8の特徴かもしれません。 マシンといえば、出場するのはストックカーが大半で、サイドウィンドウは省かれ、車内にはロールケージが張り巡らされています。また、コースによっては路面の状態をあえてスリッピーにしているところもあり、そんなレースではルーフ上に大型のウィングを装備したマシンも散見できるでしょう。なお、ボディはほとんどがスチール製であり、レースの性格上、FRPのような壊れやすいものは敬遠されている模様。細かなレギュレーションも見当たらないので、アバウトな設定になっているのでしょう(笑)。 とはいえ、1977年にはインディアナポリス・スピードロームを舞台に世界選手権も開催されています。なんと、3時間耐久レースとして開かれ、イギリスの似たようなレース「バンガーレース」出場車両のエントリーもあった模様。 ちなみに、バンガーレースは「フルコンタクト」が唯一認められている格式レース(笑)。8の字を描くコースではなく、一般的なサーキットで行われるのですが「Tボーン」、「ヘッドオン」、「フォローイン」、「ジャッキーアップ」といったぶつけ技を駆使しながらトップを競い合うというもの。スクラップ目前のような車両がエントリーしているのですが、なかにはお役御免となったスクールバスで参戦するという強者までいるのだそうです。 どうやら、フィギュア8にしろ、バンガーレースにしろ、観客に訴えてくるのは人間の本能たる「破壊欲求」なのかもしれません。赤ちゃんが自ら積み上げた積み木の家を崩して大喜びするように、クルマ好きはガッチャンガッチャンとぶつけ合うレースに喜びを見出すのでしょう。なるほど、世界にはおバカで面白いレースがたくさんありますね!
石橋 寛