与野党対立が戒厳令にまで突き進んでしまう韓国、その国民性を象徴していた女子大の共学化反対デモ
■ 「生徒たちが自主的に暴走」ってどういうこと? この騒動は、大学の改革案として共学化が浮上していることを聞きつけた総学生会と、学内のフェミニズムサークル「サイレン」が中心となって始まった。 初めは在校生200人が本館前で「共学転換を撤回せよ」というプラカードを持って座り込みを始め、本館前の道には、抗議の意味を込めて、大学オリジナルのスタジャンが置かれていた。 この手のデモ風景は、韓国では学校でなくても各地で見られる。企業に不当に解雇されたとか、コメの値段が下がったから自治体が補償しろなど理由も様々である。 ところが、次第に活動は過激になり、校内の石畳や校舎に、ラッカーペイントを使って自分たちの怒りを主張し始めた。校内にある前理事長の胸像には飲食物がかけられ、なぜか「親日派は消えろ」という落書きが書かれるなど無法地帯と化した。校舎の本館は今日まで学生会に占拠されたままである。 学校側は、被害額は約54億ウォン(約5億8000万円)に達するだろうと発表している。 総学生会長はインタビューで、「韓国社会は女性が依然として一人の人として存在することが難しい」「大学の創立理念自体が女性の教育権増進なのに(共学化は)創立理念に反する」と述べた。 同時に、「抗議の過激化は学生たちの不安感と学校側の非民主主義的なやり方に対抗してのことで、学生会で主導はしていない」「生徒たちが自主的に暴走したものであって、自分たちでは制御できない状況だった」と主張している。共学化の提案は、絶対に受け入れられないという。 男性たちだけのものだった高等教育を女性にもと、女子大を創設した歴史は韓国だけのものではないが、韓国の女性学、フェミニズムというのは日本人には理解しがたいものがある。
■ 「自分以外の他人はすべてが敵」あまりに極端な国民性 現在は消えつつあるが、かつて日本の女子大生、短大生には一般職という、言うなれば女子枠があった。男性と同じ土俵で戦わなくても、バリキャリを目指すのでなければ、総合職を目指さなくても就職ができた時代がある。 韓国にも事務職のような職種はあるが、職種の区切りというよりも、社会に出てもなお文系と理系というカテゴリで分けたがる民族性があり、文系に属する事務職の入り口に女子枠はない。つまり、非常に厳しい競争社会の中で、女性も男性も同じ土俵で戦うことになるのだ。 ただ、男性には1年6カ月ほどの兵役義務があり、2年ほど社会に出るのが遅くなる。だから、この韓国社会は自分たちの方が不利だと主張する男性も多い。 そのような事情もあって、韓国では大学生になる頃にはジェンダー対立が他人事ではなく、身近な問題になる。 競争社会であるこの国では、自分以外の他人はすべてが敵である。ただ、利害関係が一致すると時々味方になるので、女性は女性同士、男性は男性同士、一時的に団結して対立構図を作るのである。 今回の騒動を受けて、与党「国民の力」の韓東勲(ハン・ドンフン)代表は「財産上の被害などに対して、暴力事態の主導者たちが責任を負わなければならない」と発言した。 本人のSNSでも、「男女共学に転換しようがしまいが、どんな場合にも暴力が要因されてはならない」「再発を防ぐためにも必ず原則に従って処理されなければならない」と意見を述べている。 これはもっともな意見に思えるが、それに必ず噛みつくのが韓国の野党である。 野党「共に民主党」のジン・ソンジュン氏は「ハン・ドンフン代表は同徳女子大の事態をも政治問題に悪用しようとしている。法的責任云々といって学生たちを非難した。ジェンダーの葛藤、世代間の葛藤を利用して政治的計算をするのはやめるべきだ」と発言することで、また問題が大きくなりそうな予感を示している。