英語の理解スピードを上げる<カタマリをカタマリとして捉える>手法とは。定型表現の知識のレパートリーを増やし、それに慣れるべし
◆決まった言い回し このやりとりの最初の発言の太字部分はWhat does it mean to 不定詞?「…するというのはどういうことか?」という非常によく使われる定型表現を基にした疑問詞節です。 it が形式主語で後ろのto 不定詞を受けている形だと考えれば基本文法の範囲で分析的に説明することが可能ですし、「…することが何を意味するのか?」という直訳でも意味は通ります。 より応用的な表現が出てきた場合も考慮に入れると、こういう仕組みを理解しておくことは必要です。 しかし、この表現を使用している話者はいちいちそのように文を組み立てて使ってはいないでしょうし、受け手としても実際読んだり聞いたりする際には、what does it mean to…? を「…するというのはどういうことか?」という1つの決まった言い回しとして認識しておくほうがはるかにスムーズで効率的です。
◆話し言葉 ちなみに、上のやりとりでは、返しのA what? というセリフも話し言葉らしい面白い表現ですね。 相手の発言の最後に出てきた、a Sense 8という言葉を繰り返すことで確認しているのですが、sense 8の部分が正確に聞き取れなかったために、その部分をwhatに変えて表現しているパターンです(なお、このsense 8というのはsensate「感応者」という単語との言葉遊びになっています)。 このように相手の表現の一部が聞き取れなかった時に、語順はそのまま、聞き取れなかった部分のみを対応する疑問詞に置き換えて聞き返す手法はecho questionと呼ばれています。 やはり、複数人の共同作業としての話し言葉ならではの表現法と言えるでしょう。 ※本稿は、『英語の読み方 リスニング篇-話し言葉を聴きこなす』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
北村一真