感染拡大リスクある中でなぜ五輪? 2年ぶり党首討論、菅首相は明確に答えず
「まさに安心安全の大会にしたい」
五輪開催による感染拡大リスクについては、立憲民主党の枝野幸男代表も問うた。 菅首相が「国民の命と健康を守るのが私の責任で、それが開催の前提条件だ。その前提が崩れたら行わない」と述べた国会答弁を取り上げ、「総理の言う『国民の命と健康を守る』は、大会参加者などによる直接的な感染拡大だけではなく、開催を契機とした感染が国内に広がる、それが国民の命と健康を脅かすような事態は招かないということも含むのか」と聞いた。 それに対し、菅首相は立憲民主党が掲げる「ゼロ・コロナ」政策に疑義を示した後、「五輪について私の考え方をぜひ説明したい」と切り出した。 内容は、▽来日する大会関係者数の縮小▽選手への入国前、入国時、入国後の検査の徹底▽海外メディアのGPSを使った行動管理など、これまでに説明してきた政府としての取り組みで、「東京大会は感染対策、水際対策。これを徹底して安心安全なものにしなくてはいけない」と述べた。 そして「5月だけでも4回テスト大会をしている。感染対策を含めていろんな準備をして一つひとつ対応を行っている。まさに安心安全の大会にしたい」と強調した。
「東洋の魔女」にアベベ、ヘーシンク選手……
党首討論は、すべての野党党首の質問時間を合わせて計45分間と決まっているが、菅首相は問わず語りで前回1964(昭和39)年の東京五輪の思い出についても語り始めた。 「実は私自身、57年前の東京五輪は高校生だったが、いまだに鮮明に記憶している」と唐突に述べ、回転レシーブを駆使して金メダルを取り「東洋の魔女」の異名を取った女子バレーや男子マラソンのアベベ選手、敗者への敬意を忘れなかった男子柔道のヘーシンク選手らのエピソードを口にした。さらにパラリンピックがこの時の東京大会からその名を冠して行われたことに言及し、「まさに共生社会を実現するための一つの大きな契機になった」と述べ、「こうしたすばらしい大会を今の子どもや若者に伝えたい」とした。 菅首相が答え始めて6分に差し掛かろうという時、野次が飛んだ。ざわつき始めた議場内で、菅首相は「東日本大震災から復興した姿をぜひ見てほしい。世界が新型コロナという大きな困難に立ち向かい、世界が団結して乗り越えることができた。そうしたことも日本から発信したい」と続けた。 長い答弁を聞き終えた枝野代表は「2年ぶりの党首討論で、多くの国民が五輪を開催して命と暮らしを守れるのか注目している。総理の後段の話はここではふさわしくないんじゃないか」と五輪の思い出話は冗長だったと苦言を呈した。