【クラシック オブ ザ デイ】ポルシェとメルセデスが共同開発した「メルセデス・ベンツ 500E」は異彩を放つ名車だ!
で、そんな人間からすると500Eはどんな車だったかと言えば、確かにW124にR129を500SLと合体させた自動車と表現することが的確な自動車であったが、じゃあW124とR129とどっちよりだったかといえば、圧倒的に運転した印象は500SLに近かったように思う。エンジンが500SLなのだから当たり前ではあるのだが、パワー感と滑らかさ、そしてみしりともいわないまま圧倒的な速度までするするっと路面をなめながら走り抜ける感覚は、500SLそのものであったといってもよい。 だがもちろん補強を施されたとはいえ、これほどのパワーとサスペンションとタイヤを与えられても、一切の不満を言わず受け止めたW124の基本骨格の素晴らしさと相まって生まれたことが500Eを伝説にしているとも言えよう。 W124もR129も基本的な部分が素晴らしかったからこそ、「羊の皮をかぶった狼」のような自動車が奇跡的に成立したのだと思う。その2台のどちらかがちょっとでもダメだったら、これほどのメルセデス・ベンツは生まれてこなかったであろう。
1991年から1995年までの約4年間に、前半はポルシェの工場とメルセデス・ベンツの工場、後半はメルセデス・ベンツの工場で生産され、結局、10,479台が生まれた。つまり年間2,000台ほどが作られたわけで、この数は多いようで、やはり少ないと思う。そのうちの1,184台が日本に正規輸入されたと記録されているが、実際にはそれを上回る並行輸入の500 Eが日本に上陸するほどの伝説的な人気車となったが、北米ではこの500Eはそれほどの人気者になれなかったというのは興味深い。アメリカ人にはこういう「羊の皮をかぶった狼」みたいな自動車は難解だったのだろうか。 それにしても、今改めて500Eなどを見ると、なんだか当たりはずれの激しい今のメルセデス・ベンツのラインナップを見ながら、あの頃はよかったという決まり文句がつい出てしまうことを、お許しいただきたい。
Matthias Techau