薬、iPhone、財布…“チェックリストの刺青”を腕に刻んだ女性の半生。薬を飲み忘れ「やらかした」事件を経て
家族を振り回していた父親と真面目な母親
百合さんは自身に起きていることを極めて客観的に分析している。たとえばこんな具合だ。 「父から受け継いだ特性だと考えているんです。さらに言うと、父の父も似たような性質だなと私は思っています」 その父親に、家族は随分と振り回されたという。 「父はいわゆる実業家でした。物心ついたときから、家に居た記憶がありません。深夜に帰ってきて、朝早く出ていったようなんです。小学校5年生くらいのとき、母から『実は1ヶ月前から父が家出をしている』と聞いて、初めてわかったくらいです。母は愛情のある家で育ち、しかし奔放な父の女癖の悪さに悩まされていて。いつまでも父の帰りをご飯を作って待っているような、純粋で古風なところもありました」 度重なる父親の愛人騒動に家族は振り回されたが、百合さんが中3のとき、家出した父との生活が再び始まった。 「母は真面目でオーセンティックな人なので、『両親がいて初めて子どもが幸せになる』という考えに縛られていました。したがって、父との再構築を試みたのです。戸建てを建設し、私たちはそこに住むことに。父とはいえ、これまで接点がほとんどなかった男性との同居は居心地の悪いものでした。父も急に父親としての役割を果たそうとしたのか、細部に口出しをしてきて、こちらの言い分も聞かずに『こういうものや』と断定的で高圧的な態度だったのを覚えています」
家族で唯一“父親と話せる”存在に
百合さんとその弟や妹は、父親との反りが合わなかった。だがそれでも、百合さんだけは家族で唯一父親と話せる存在だとみなされていたという。 「だんだん、『親戚のおもろいオッサンくらいに思えば腹も立たないかな』と思って、こちらの応対を変えました。また、もともと私と父の家庭内のポジションが似ていたというのもあるかもしれません。母や弟、妹はおとなしいタイプでしたが、私と父は素行が良くなかったですからね」 素行の悪さは折り紙付きだ。 「私は当時流行した脱法ハーブなどを愛用していました。さすがに覚せい剤には手を出していませんが、父は合法・非合法問わずにやっていたように記憶しています。あるときは、外出する私を父が呼び止めて、『◯◯でこの薬こうてきて』と言ったほどです」