テックシティとしてのバルセロナが欧州、世界から注目される理由
テックハブでの盛んな活動で、地域への貢献も
スタートアップの拠点として欧州で人気の都市3位にバルセロナが選ばれるなど、カタルーニャ州ではスタートアップの活動が目覚ましい。欧州内でカタルーニャ州にあるスタートアップの数は2023年に2,000を超え、2016年より2倍に膨らんだ。州政府は2030年までに4,000社になることを期待している。 州内にあるスタートアップの内訳を見ると、Eコマース、ヘルステック、ICTと通信などIT関連に取り組む企業などがおよそ半数を占める。こうした州内のスタートアップの総売上高は21億ユーロで、規模はまだまだ拡大すると予想されている。雇用も生まれていて、外国からの人材を含めて、すでに2万600人以上が働く。企業サイズにも変化があり、従業員10人以上の企業は2020年には18%だったのが2023年には32%と増加した。 州内のスタートアップは “テックハブ”を利用することがある。テックハブとは技術開発とイノベーションを活用し、ビジネスサービスやソリューションなどを提供する企業などの集合体のような機関だ。州内には96のハブがあり、ハブごとに医療関連、ゲーム関連、産業関連など特色を持っている。バルセロナは今や、ロンドン、ベルリンに次ぎ、欧州3番目に大きいスタートアップハブのある都市に成長している。 ハブの規模は大小さまざま。有名なものでいえば、「テックバルセロナ(Tech Barcelona)」だろう。民間の非営利団体に運営されるハブで、約3,000の企業が在籍し、うち2,000社がスタートアップだ。オンラインでの活動も可能で、物理的に“デスク”を置く必要がない。テック企業であれば、世界中どこからでも参加できるので、他のテック企業とのコラボレーションも比較的簡単となった。 またメンバーになれば、バルセロナで行われる国際展示会にも無料で入場することができる。たとえばバルセロナでは毎年2~3月にモバイルワールドコングレス(MWC)という、AIや5G、IoTなどに関する展示会が開催されてて、2024年は200以上の国と地域が参加した。大規模な国際展示会へのアクセスも簡単にし、新しい技術や開発企業の担当者らと交流できるのも大きな魅力だ。 もともとスタートアップや起業家同士が交流するために2013年に設立されたが、徐々に優秀なスタートアップやテック人材が数多く集まっていると評判になると、ネスレなどの大企業の関心を引き寄せることになった。大企業がスタートアップとの連携を図ることで、新たなイノベーションが次々と生まれることになり、バルセロナ、ひいてはカタルーニャ州での技術革新のスピードが加速。さまざまな産業で新しいビジネスモデルやサービスが展開されるようになった。 このハブから市民の日常生活に大きな影響を与える企業も誕生した。代表的な事例は、フードデリバリースタートアップ「Glovo」や、フリーマーケットアプリの「Wallapop」だ。バルセロナの人なら知らない人はいないともいえるサービスを提供している。