海自の練習艦ついに「ネット開通」で世界が変わる! 動画も見放題!! 危険のタネだった“Wi-Fi飢餓”解消の意味
ネット環境を求めて座礁事故も
「乗組員として嬉しいし、ありがたい」 海上自衛隊初となる新装備が練習艦「かしま」に取り付けられました。それは新兵器の類ではなく「スターリンク」です。アメリカのスペースX社が運営する「スターリンク」は衛星インターネットコンステレーションで、地球上のほぼ全域でインターネットアクセスを可能にします。ロシア・ウクライナ戦争ではウクライナ軍が使用して注目されています。 【写真】これが試験導入された「スターリンク」ルーターです 現代生活においてスマホは必需品であり、電波強度やバッテリー残量のステイタスアイコンが行動を左右する要素にもなっています。災害発生時に充電可能ポイントが広報されるのも当たり前になりました。 しかし海では陸から遠ざかるにつれてキャリアの電波が届かなくなり、スマホが使えなくなります。国内航路でもフェリーに乗船しているとネットが繋がらなくなる経験をすることがあります。1~2日程度であれば「圏外」も我慢できますが、これが何週間にも及ぶと社会から孤立したような心理に追い込まれていきます。 たとえば2020年7月25日、パナマ船籍の貨物船「わかしお(WAKASHIO)」がモーリシャス沖で、座礁して燃料油を流出させる事故を起こしました。日本の運輸安全委員会が公表した最終報告書によれば、船はモーリシャスに寄港する予定がなく、詳細な海図を持っていないにもかかわらず、乗組員がスマホのための電波を受信しようと島に接近したことで浅瀬に乗り上げたとしています。外洋航路乗組員がネット環境に「飢えている」現実が浮かび上がりました。
練習艦「かしま」と「しまかぜ」でWi-Fi利用可
海上自衛隊でも同様の問題を抱えています。令和の時代に入っても、外洋におけるネット環境はメールが1日1往復程度。相手も家族、友人など事前登録が必要で、使用は個人端末から艦内サーバーに集約し、決まった時間に商用衛星通信でまとめて通信を行うという状態です。YouTube視聴など夢物語という有様で、乗組員は外国に寄港するとWi-Fiを求めてスタバを探したり、ホテルにわざわざ外泊したりするそうです。 ちなみに人気のある泊地が、Wi-Fiの使える自衛隊のジプチ拠点です。しかし外洋でネット環境がないということは、福利厚生上の大きな問題でもありました。 そんな「Wi-Fi難民問題」を解決するのが、2023年7月にサービス提供を開始した「スターリンクMARITIME」です。制度が改定されて利用可能エリアがこれまでの領海内から領海外まで拡大したことに伴い、民間船では2024年3月、「さんふらわあ さつま」で試験導入されましたが、海自でも早速導入を決定したのです。 2024年2月に総務省が認可し、5月には練習艦隊の練習艦「かしま」と「しまかぜ」に、横須賀でアンテナやルーターの取付工事が行われました。「スターリンクMARITIME」のサービス導入検討から実際の取り付けまでの進捗は早く、それだけ切実な問題になっていたことを示しているようです。 装備された器材は市販品で、両艦にそれぞれアンテナ2基を設置しました。艦内のルーターは食堂に置かれており、食堂内と一部通路で通信できます。将来的にはルーターを増設して、寝室でも通信可能にしたいとしています。