【能登半島地震】大地震を予測する新報告が出ても27年前の被害想定を変えなかった石川県、隣県・富山は変えたのに
■ 研究成果をいち早く防災に生かす姿勢も無かった 石川県は、国に最新の科学的評価を催促しておきながら、その成果を生かそうという姿勢も無かった。 県の危機管理監は、2018年にこんな説明をしていた。 「国において平成25年度(2013年度)から8年をかけ、森本・富樫断層帯や邑知潟断層帯を含む日本海側の地震・津波発生モデルを構築し、地震、津波の発生予測を行うなどの調査研究を行っているところでありますが、被害想定の見直しには断層の最新の科学的知見やデータを反映することが極めて重要なことから、国に対しスピード感を持って調査を進めるとともに、その結果を早期に公表するよう要望を行っているところでございます」(2018年12月7日、県議会) この8年かけた調査研究は、「日本海地震・津波調査プロジェクト」(日本海プロジェクト)*5 と呼ばれるもので、文部科学省が東京大学に委託して30億円以上かけて日本海側の活断層の様子を詳しく調べたものだ。地震本部の長期評価もこれをもとにしている。 *5 日本海地震・津波調査プロジェクト 日本海プロジェクトでは、成果を防災に生かしてもらうために、活断層をかかえる道府県で地域研究会を開いてもらうよう働きかけていた。地域研究会は、防災を担当する行政関係者、警察や自衛隊、電力会社や通信事業者などライフライン事業者、研究者などが集まって、研究成果を防災に反映する上でどういう問題があるか話し合ってもらう場だ。 「災害情報を関係者に具体的にイメージしてもらい、それを対策につなげる方法を検討する場として有効だった。うちには助けに行くこんな手段がある、とある機関の人が説明しても、他の関係者は知らないことがある。じゃ、いざという時はうちの誰それに連絡してくださいというようなつながりも生まれた」 地域研究会を各地で進めてきた佐藤比呂志・東大名誉教授はこう話す。 「石川県にも地域研究会にはぜひ協力してくれと最初の2、3年お願いしていたが、梨の礫で、あきらめることになった。県が動いてくれないと、東大が音頭をとっても関係者に集まってもらうのが難しい」 対照的にお隣の富山県は熱心で、地域研究会は2014年度から2020年度まで8回開かれていた(表)*6 。 *6 日本海地震・津波調査プロジェクト「地域研究会・合同地域研究会の実施」 早く成果を出せと国に要望していたのに、それを生かす地域研究会を開かなかったのはなぜか。石川県に尋ねると「記録が無いのでわからない」という返答だった。