子どもが生まれても何も変わらない夫やワンオペ育児の悩み… 父親になれない夫に絶望【書評】
しかし、どんな人間にも我慢の限界はある。お金を使い込んだことで、もう飲み会には行かないと約束したはずなのに、夫は上司に誘われたからと平気で飲み会に行ってしまった。帰って来た夫は反省していないどころか、自分ばかり我慢する生活はもう嫌だというのだ。お小遣いを減らされ、自由に飲み会に行けない生活は限界だと主張する夫。そんな夫に心から絶望したさくらは、ついに「私たち別居しよう」と伝え、夫との別居生活に突入する。
さくらにとって夫との別居生活はとても快適だった。夜中にうるさく帰ってきて起こされることもないし、子どもが寝た後は好きなことをして過ごせる。そんな生活を楽しむ一方で、毎日の預け先がなく仕事を休職せざるを得ない現実により、ひとりで子どもを育てる大変さにも直面していた。夫と離婚したいと思っている人なら、さくらの葛藤をまるで自分のことのように感じるだろう。こんなに苦しんできたのに、感情だけでは離婚を選べない現実の難しさを実感させられる。 そして、離婚してシングルマザーになった人の話を聞いたことで、さくらはこのまま別居を続けるべきなのかどうかを考えはじめ――。
本作は、とにかくリアルな家庭の悩みが描かれていることが魅力の作品だ。さくらと同じ立場の女性にとって、共感できるシーンがたくさんあるだろう。また、「こうなってはいけない」という反面教師のような夫の姿が描かれているので、ぜひ子どもを持つ男性にも読んでほしい作品だ。 一度は別居を選んださくらは、子どものために自分のためにこれからどんな選択をするのだろうか。さくらが幸せになることを祈りながら、さまざまな葛藤の末に選んだ結末を見届けてもらいたい。 文=ネゴト/ 押入れの人