フランスで“映画の多様性”が実現している理由 横浜フランス映画祭 2024が開幕
異文化の交差点に立つ映画
―日本では海外作品の観客が減っている傾向があるのですが、フランス映画を日本に紹介する難しさは感じませんか。 フランスでヒットした映画が、必ずしも日本でヒットするとは限りません。特にコメディ映画はなかなか難しい。でも、こういう違いがあるのは良いことなんです。あらゆる人に語りかけるのが映画なのですから。 個人的な印象では、日本の観客は非常に好奇心が強く、感覚が洗練されていますね。フランス映画を紹介する立場としては、幸運だと考えています。もちろん『ONE PIECE』や『SLAM DUNK』とは勝負になりませんが(笑)、日本にはフランス映画の根強いファンがいてくれます。 目下の課題としては、そのファンをもっと若い層へと広げることです。これは日本に限らず、すべての国に言えることです。謙虚に若い世代のことをもっと理解して、PRや情報収集の方法を変えていかなければなりません。 何事も力任せに変えることはできません。物事を動かすのは、常に意見交換、対話です。ただ、謙虚さとともに大胆さも必要です。いずれにせよ、挑戦しないことには始まりません。難しい使命を掲げてはいますが、常に楽観的なんです。 ―フランスでヒットする日本映画といえば、やはり『ONE PIECE』や『SLAM DUNK』なんですよね? 確かにそうですが、是枝(裕和)や濱口(竜介)ら、必ずお客を呼べる偉大な監督たちはいます。一握りとはいえ、そこを入口に日本映画に対する関心が深まっていくでしょう。 先ほど話したように、お金を稼ぐ映画があってこそ、商業性の低い作品や作家主義の作品を製作することが可能になるのです。楽観的過ぎるかもしれませんが、アニメが成功することで、日本映画や日本文化全般に光が当たる、ということもあるのではないでしょうか。 どうしたらもっと映画を観てもらえるかという問いは常に難しいですね。でも考え抜くしか方法はありません。コロナ禍で映画界は困難な時期を経験しました。その際、映画は第一に優先すべきものではないという言い方もされた。しかし私はそうは思いません。逆に最も重要なものの1つだと考えます。困難な時こそ、芸術一般は重要な役割を果たすのです。問いを立て、状況を覆し、希望を与え、夢を抱かせてくれる。まさしく生きるために不可欠なものなのです。 取材・文:松本卓也(ニッポンドットコム) 横浜フランス映画祭 2024 会期:2024年3月20日(水・祝)~3月24日(日) 全5日間 上映会場:横浜ブルク13(横浜市中区桜木町1丁目1-7 コレットマーレ 6階)最寄り:桜木町駅