国内導入わずか206台! クーペ×ミニバンのクロスオーバー? ルノー・アヴァンタイムとは?『さいたまイタフラミーティング2023』で見つけた名車・旧車vol.8
信頼性よりも理想主義を優先するクルマづくり……そのワケは?
現在ではかなり改善し、かつてに比べればトラブルもだいぶ減ってはいるが、信頼性に関して言えばフランス車はお世辞にも褒められたものとは言えない。パーツの品質や工作精度は日本車とは比較するべくもなく、定期交換部品も多いし、ときには予期せぬトラブルに見舞われることもある。フランス車を過去6台乗り継いできた筆者もそれなりに苦労させられた。 だが、これはある程度は仕方がないことと割り切る必要がある。フランスに限った話ではないのだが、EUの前身となるEC(欧州共同体)の成立以前、欧州各国の自動車市場は極めて閉鎖的であった。高額な関税によって各国の自動車産業は手厚く保護されており、フランス人ならフランスのメーカー、イタリア人ならイタリアのメーカー、イギリス人ならイギリスのメーカーの中からクルマを選ぶのが一般的であった。 つまりこの頃の欧州は自動車メーカーの超売り手市場。自国市場を国内の数社で独占しているのを良いことに、各メーカーの技術者は自身の理想を具現化すべく、好き放題にクルマを開発できる環境にあったのだ。クルマづくりをする上で、商品性や信頼性、製造コストと理想主義を天秤にかけたとき、彼らは迷わず後者を選んだ。まさに究極のプロダクト・アウトの世界。自動車設計者とデザイナーのパラダイス。 愛車がトラブルを起こして割りを食うのは一般ユーザーであったが、彼らは自国製のクルマを買うしかなく、選択肢はおのずと限られているので、放っておいても高確率で自社製品をリピートしてくれる。そうした状況ならば手当てが後回しになるのは当然のことだろう。
強烈な個性が魅力を放つ斬新なクルマづくりこそがフランス車の持ち味
現在では欧州全体が巨大な単一市場になって自由競争が行われるようになり、欧州の自動車メーカーも世界規模のグローバル市場で成果を挙げなければ生き残りが難しい時代となった。とは言え、まだまだフランス車には古き良き時代の残滓が感じられる。メーカーごとの個性や独自性がだいぶ希薄化した現代でも、この国のクルマからは時折、全身個性の塊のようなクルマが登場することがある。大胆なコンセプトと設計者が理想とするカタチの具現化……日本のメーカーなら企画会議の段階で「顔を洗って出直してこい!」と一喝されて終わるであろうクルマが堂々と製品化されるのは、フランス車のフランス車たる所以である。 もちろん、こうしたクルマはアイデア勝負、斬新なコンセプト優先、スタイリング命なので、フツーのクルマなら重要視されるものが二の次、三の次とされることも珍しくはない。手段のためには目的を選ばないから屋上屋根を重ねるごとく怪怪奇奇なメカニズムだって許されてしまう。 機械は「同じ性能なら単純な設計のほうが高性能」とされるから、こうしたクルマは整備性が悪く、故障の発生率も高いだろう。でも、それで良いのだ。どうせフランス以外では数寄者しか買わないのだから。それが許されるのもこの国のクルマが持つ懐の深さなのだろう。 例えば『さいたまイタフラミーティング2023』で出会ったルノー・アヴァンタイムのように……。
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