三題噺、総裁選と独裁政権と永井豪
立憲民主党の代表選と自由民主党の総裁選が相次いで終了した。立民代表は野田佳彦氏が、自民党総裁は石破茂氏が、それぞれ就任した。 私としては、両氏とも消費税維持ないし増税路線なので、かなりがっくりきている。前に書いた通り、私は消費税こそは過去30年以上の日本の没落の根本にある元凶と考えている(「自民党総裁選と『はだしのゲン』をつなぐ不等式」)。与党と野党第1党のトップが消費税維持・増税で一致するなら、廃止はおろか減税すら難しかろう。すなわち、日本の「まっさかさまにおちてでざいあ~」の状況はまだまだ続くということだ。 いや、特に自民党はそれどころではない状況にあるように見える。通常、自民党総裁が交代して新たな総裁が内閣総理大臣に就任すると、期待感から自民党の支持率は上がるのだが、少なくとも総裁選終了時点でのネットの反応を観察していると、「最悪の候補ばかりがそろった総裁選の中から、とりあえずは“いちばんましな最悪”を選ぶことができた」というものが目立つ。 そして、石破新総裁が切り回していかねばならない状況もまた、決して楽なものではない。 ●なにもかもうやむやにしようとしている なによりも、第2次安倍政権以来、決着から逃げてきた数々の問題がとっちらかったままになっている。 一番はっきりしているのは、旧統一教会の問題だ。2022年7月8日に、遊説中の安倍晋三元首相が、旧統一教会に家庭を破壊されたと恨みを持つ山上徹也被告により殺害される事件が発生。そこから、自民党とカルト団体の旧統一教会との関係が一気にクローズアップされた。 韓国に起源を持ち、大韓民国中央情報部(KCIA)とも関係があり、霊感商法を展開して多数の被害者を発生させ、洗脳手法による信者獲得と獲得した信者に対する限界的搾取で多くの人々を苦しめたカルト集団と、政権党が密接な関係を継続していた――どんなに控えめに見積もっても近代国家にあるまじき異常事態だ。 本来ならば自民党は、速やかに実態を調査して公表し、旧統一教会と関係した者を処分し、組織として絶縁を宣言しなければいけない。また、旧統一教会が宗教法人格を持つのはどう考えても不適当なので、宗教法人法に基づく解散命令に向けて積極的に動くべきところだろう。 ところが2年以上も経過し、ますます癒着の実態が明らかになってきているのに、自民党はなにもしていない。関係を持つ議員は放置され、組織としての絶縁宣言も出ず、解散命令請求の動きは鈍い。 しかも安倍許首相を殺害した山上徹也被告の裁判が、事件後2年以上を経過しても始まっていない。日本国憲法37条は「すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する」と定めている。現状は明白な憲法違反である。 日本政府が「裁判で被告側が、旧統一教会についての主張を展開されたら面倒なことになる」と考えているようではないか? あるいは裏金議員の問題だ。政治にはカネが必要。ということで、党主催で資金集めパーティーを開催し、パーティー券販売のノルマを議員に課す。ノルマ以上にパーティー券を販売した議員に、超過分を還流する。還流分を政治資金法の定める政治資金として取り扱わず、別会計にする。 すると個人の収入となるので、確定申告する必要があるが、しないで隠す。これが今回問題になっている裏金が生まれる流れだ。 もちろん税法違反であり、法治主義を採用する国としては、国会議員の犯罪として厳正な処罰をしなくてはいけない。税法には交通違反と同じ「一罰百戒」の側面があって、すべてについて厳正に法が適用されているわけではない。しかし、国会議員は選挙を経て選ばれた国民の代表だ。道義的な面からも一罰を積極的に受けることで、百戒を国民に知らしめねばならない立場である。ソクラテスのように「悪法もまた法である」と毒杯を飲み干さねば、国民に対する責任を果たしたとはいえない。 ところが、これまた自民党はうやむやにしようとしている。