ファーストサマーウイカが語る『光る君へ』。清少納言が定子の「光」だけを書き残した理由
「私の志のために、夫を捨てようと思う」。異端で、自分で切り開く強さを持つききょう
―圧が強めの先輩と苦笑いする後輩というのは納得感がありますが、ききょうはまひろのどんなところに魅力を感じたと思いますか? ウイカ:ききょうは自尊心もあり、自分の実力や得手不得手というのを把握しながら、表に出さないようにできるタイプだと思います。そして、空気を読みながらあえてぶち壊すことを選択できる人間だと解釈しているんですが、まひろには自分が持っていないものがあると気づいたんだと思います。 私は二人の違いを「剛」と「柔」だと思っているんですが、感性や物事の考え方が両極にいるからこそ惹かれあったんだと思います。まひろも苦笑いだったかもしれないですけど(笑)、この人面白いなと、興味深く接していたんだと思うんですね。 ききょうは、大抵の人間から自分の言うことにポカンとされたり、むしろまわりをある種、見下しているところもある。「こいつらに言ってもわかんない」みたいに。まひろは、「この子はできる子」と認めた唯一の存在だったからこそ、友だちのような感覚で受け入れたんだと思います。 ただ一方で、この時代の女性には少なかったであろう、己の知識を活かして、広い世界で自分を試したいという野心や行動力がある点は共通していて、そこもお互い感じて惹かれ合ったのではと考えました。 だから尊敬もしているし、仲間でいてほしいから足しげく通って一方的に喋って……ということを続けていたんじゃないかなと思います。 ―先ほど、ききょうを「異端な存在」とおっしゃっていました。第14回「星落ちてなお」では、ききょうがまひろに「私は私の志のために、夫を捨てようと思いますの」「私は私のために生きたいのです」と伝えるシーンがあります。印象的なセリフで、自立していて、芯の強さも感じました。 ウイカ:清少納言は、実際は元夫とも交流が深くあったり、藤原斉信(金田哲)との関係があったり、意外と恋には奔放だったという説もあります。 『光る君へ』では描かれませんでしたが、百人一首には行成に宛てた歌も残っていますしね。 ウイカ:「夫を捨てる」というのは『光る君へ』バージョンの解釈でもあると思うんですが、ききょうという人物はそういうキャラクターだと定義したということですよね。自分の信念を曲げず、野望や野心を優先する選択をとること自体がきっとまず異端だったと思うんです。 現代でもキャリアを重視する女性が増えていますけれど、すごく現代的ですよね。別に家庭をいらないと思っているわけじゃなくて、「家庭もほしいけど、そのために何かを諦めなきゃいけないなら、私はこれをやりたい」という選択ができる。 流れにただ身を任せないというか、自分で切り開いていくというききょうの姿勢は、その時代には異端であったと思うし、まわりの評価を顧みずにそれを公言できる強さにも、まひろは感化されていたんだと思います。こういう生き方があるんだと影響を与えている。 まひろの物語なので、一つの指標というか、モデルケースとしてききょうをそういうキャラクターに置いたとも解釈できますが、そこはとても賛同するというか……。まさに私自身そういう生き方をしてきて、博打な人生を歩んできているので、自分の手で運命や人生を切り開いていくということにはとても親近感が湧きます。 ―そんな、ききょうにとって重要な人物であるまひろ役の吉高由里子さんとの共演はいかがですか? ウイカ:吉高由里子さんはすべて受け止めてくれながらも、どんな返しをするんだろうという予測できなさがあって、圧倒的だと思います。目が覚めるようなお芝居をされている由里子さんと、定子役の充希さんから受け取って、全力で返せるだけ返すという感じです。 でも、由里子さんは「何も考えてないよ~」みたいな感じで言うんですよね。それが天才で天才で、最高です。「飲みに行こうよ~」ってすぐ言ってくれますし(笑)、誰に対しても分け隔てなく、本当に素晴らしい座長だと思います。