【資産総額1億円超】80代「まるで女王様」な母が準備した「超ありがた迷惑な遺言」に50代長女が疲労困憊のツラ過ぎる事情
現金保有なら「遺留分の算定」もシンプルに
母親は田中さんに自宅を相続させるという遺言書を作成していますが、郊外の120坪の邸宅は、夫婦2人暮らしの田中さんには広すぎます。相続してから売却してもいいのですが、母親が高齢者住宅に住み替えて自宅を売却できれば、介護・介護費用の捻出・不動産の維持管理という問題も軽減できます。 母親が自宅を売却する場合は、利益の3,000万円まで課税されない特例があります( 「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」 )。これだけでも譲渡税600万円を節税することができます。 さらにいうと、売却代金で評価の小さくなる区分マンションを購入して賃貸すれば、時価の30%以下の評価に変わることから、相続税を減らす・遺留分を少なくする効果を狙えます。 田中さんが懸念している遺留分ですが、この算定で課題になるのは不動産の評価です。 自宅にしてもマンションにしても、路線価の「相続評価」ではなく、「時価」が算定基準となることが多いのです。しかし、実際に売却しないなら、「時価」の算定として不動産鑑定評価をしなければならず、そうなると時間も費用もかかってしまいます。 その点、財産が金融資産だけなら残高で計算できるためシンプルです。 母親が自宅を売却して住み替えることで、遺留分の対策になるという旨のアドバイスに、田中さんは納得され、「母親にわかってもらえるよう、きちんと説明します」と言って事務所を後にされました。 相続後、遺留分の捻出のために実家を売却するとなると、転居費用、家財などの処分代、解体費、測量費、仲介手数料に加えて譲渡税もかかってきますが、こうした費用は遺留分の算定には入れられません。 そのため、現金で遺留分を取得したほうが得策なのです。 節税対策にはなりませんが、煩わしさを軽減する方法として、不動産を売却しておき、相続発生時に現金等の金融資産だけの状態にするほうが、遺留分の算定がラクになるということも覚えておくといいでしょう。 ※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。 曽根 惠子 株式会社夢相続代表取締役 公認不動産コンサルティングマスター 相続対策専門士 ◆相続対策専門士とは?◆ 公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。 「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
曽根 惠子
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