【資産総額1億円超】80代「まるで女王様」な母が準備した「超ありがた迷惑な遺言」に50代長女が疲労困憊のツラ過ぎる事情
相続対策目的の同居は本末転倒
筆者と提携先の税理士が田中さんの母親の資産内容を確認しましたが、資産は不動産に偏っていました。実家は敷地120坪もの広さで、ゆうに建売住宅の3軒分はあります。 父親の相続時には、配偶者の特例や小規模宅地等の特例を活かし、納税額を減らすことができました。そのため、田中さんも母親と同様、小規模宅地等の特例を活用したほうがいいのかと悩んでいます。 「私は母親と同居していませんし、夫と暮らす自宅もあります。ですので、特例は使えませんよね? だから自宅を売却して母親と同居すべきなのか…」 しかし、田中さんは浮かない顔です。筆者と税理士がそれとなく話を促すと、ポツリポツリと本音が出てきました。 「母は〈女王様〉のような性格で、かなり気性が激しいのです。何もかも自分の思い通りにならないと気がすまない人で、兄が物理的な距離を取っているのも、それが理由のひとつだと思います。私も仕事と家事を理由に距離を取っているので、なんとかいまは平穏ですが、あの母と同居ができるかどうか…」
母親が住み替えることも選択肢
現状の母親は要支援2という判定で、なんとか1人暮らしが可能です。買い物や通院へのサポートは必要ですが、会社員の貴重な土日を使って母親の世話に通うより、いっそ同居したほうが楽ではないかというのが、田中さんが苦手な母親との同居を考えた理由でした。 また、田中さんは60歳以降もいまの会社に嘱託として勤務したいと考えています。その間に母親の健康状態が悪化すれば、なおさら通いながらの介護がむずかしくなることも心配しています。 田中さんの気持ちや考えはよくわかりましたが、結論からいうと、相続税の節税のために生活環境を変えて窮屈な思いをするのは、本末転倒だといえます。 そもそも同居は、弱ってきた母親の介護が目的であり、同居の結果「特例」がついてくるわけです。しかし、性格の合わない大人同士、ストレスをためて同居してもつらいだけではないでしょうか。いまの時代、介護は専門家に任せられますし、「同居しない=介護放棄」ではありません。 「田中さんがガマンをするのではなく、お母さまには介護が受けられる高齢者住宅に住み替えてもらうというのもいい選択肢だと思いますよ?」 筆者のアドバイスに、田中さんは一瞬目を潤ませました。 「それができたらいちばんうれしいです。遺言の内容は、正直、有難迷惑でしかなくて…」
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